【歴史散歩】浪速三大橋 天神橋の妖怪の正体

【歴史散歩】浪速三大橋 天神橋の妖怪の正体

 かつて大阪には、「なにわ八百八橋」と呼ばれるほど多くの橋があった。なかでも天神橋、天満橋、難波橋は活気にあふれ、川は渡るだけのものではなく、夏の夜には涼をとる場所としても親しまれていた。そんな橋の歴史に目を向けると、次から次に面白さが浮かび上がってくる。

スポンサーリンク

なぜ橋にライオン?

 大阪天満宮から南へ5分ほど歩くと、大川に架かる「天神橋」に着く。橋の中腹からは、二階建て構造の「天満橋」と、ライオン橋で知られる「難波橋」が両サイドに見える。これが、いわゆる「浪速三大橋」だ。大川沿いは歩きやすく整備されており、夕暮れ時は散策にぴったりとなる。

天神橋
天神橋

 天神橋は1594年に架橋された。大村由己の『秀吉事記』を気に入った秀吉が「褒美を与える」と言ったところ「大川に橋を架けてほしい」と願い出たのが始まりとか。浪速三大橋は、豊臣時代から江戸初期に架けられたといわれている。難波橋には、東大寺の大仏開眼で知られる僧・行基が架けたという伝承もあるが、大川の流れが数百年にわたり一定していたとは考えにくく、現在と同じ場所かは定かでない。

難波橋

 ちなみに、難波橋のライオン像には諸説ある。橋が架けられた1915年は天王寺動物園が開園した年でライオンが連想されたとも。パリのセーヌ川に架かるポンヌフ(パリに現存する最古の橋)を参考に設計されたことから、アレクサンドル3世橋のライオン像を模したともいう。また、「西ひがし みな見にきたれ なには橋 すみずみかけて 四四の十六」という江戸時代の狂歌にある「四四=獅子」に掛けた〝しゃれ〟という説もある。

天満橋
天満橋

橋の相撲番付

 ところで、『浪華橋々繁栄見立相撲』という江戸時代に作られた大阪の橋ランキングを知っているだろうか。相撲の番付になぞらえて橋のにぎわいを表したもので、東の大関に天神橋、西の大関に難波橋が並ぶ。行司役に四ツ橋、勘定元は京橋、差添人には天満橋が選ばれている。

大阪の橋を番付けした「浪華橋々繁栄見立相撲」大阪府立中之島図書館所蔵
大阪の橋を番付けした「浪華橋々繁栄見立相撲」大阪府立中之島図書館所蔵

 しかし、なぜ天満橋が行司(審判役)を補佐する差添人なのか。仮説になるが、橋の南に町奉行所、北に倉庫や町与力の屋敷があって役人の往来が多かったからとも。ちなみに江戸時代、横綱は称号で番付上の最高位は大関だった。なお、この橋番付は橋を渡る人の多さで決められたと欄外に記されている。

大阪の夏を彩る天神祭
大阪の夏を彩る天神祭。951(天暦5)年に神鉾を流して、流れ着いたところを斎場とし心霊を禊したのが始まりという。船渡御は著名で、神輿が難波橋から船に乗り楽を奏して戎島の御旅所まで往復した。地盤沈下の影響で昭和28年(1953)からは大川を遡行することになった/出典 : おおさかeコレクション

橋は納涼スポット

 エアコンのない時代、大阪には夏の夜は橋の上で涼をとる風習があった。特に浪速三大橋は夕涼みの人気スポットで、湯飴や甘酒、葛湯や善哉、新田西瓜売り、虫売りなどの店が周囲に並んでいたそうだ。氷が広く出回るようになったのは明治の中頃で、それまでは「冷たいものは腹を下す」と、夏でも飴湯や甘酒といった温かい飲み物が好まれていたという。

 納涼にぴったりな逸話もある。天神橋に「お多福」の姿をした妖怪が現れたというのだ。その妖怪は「ほーねんぢゃ豊年じゃ」と叫びながら踊り、人が近づくとスーッと姿を消した。目撃者が相次ぎ、見物人が押しかけ、飴湯や善哉が飛ぶように売れた。

 やがて妖怪は捕まり、その正体は善哉屋が雇ったバイトだったとか。

 しかし、犯人が捕まった夜にもまた、お多福が現れたと伝わる。真相はわからないが、妖怪騒ぎのオチこそ大阪らしい。

骨董マニアの隠れ家的カフェ

 難波橋から西へ徒歩約3分。天満警察署前にある浮世絵専門店「西天満竹井」の地下には、知る人ぞ知る穴場の古民家カフェがある(土日祝休み、午後3時~)。店内では古伊万里などの食器が手頃な価格で販売されており、骨董好きにはたまらない。

ギャラリー・喫茶・BAR
ギャラリー・喫茶・BAR
古伊万里などの食器も販売
古伊万里などの食器も販売

レトロでかわいいスポット

 天満橋と天神橋の間に、バトングループの店が〝ひとつの町〟のように点在している。パンやテイクアウトフードを中心に、レトロでおしゃれな雰囲気と工夫を凝らした商品が人気だ。
 例えば、「コバトパン工場」のタマ助とハム助、「コバトスタンド」のどらやき〝ドラキチ〟など。一つの店舗を知れば、すべての店を巡りたくなる。

バタークリーム&あんこが絶妙な「ドラキチ」
バタークリーム&あんこが絶妙な「ドラキチ」
コッペパン専門店のコバトパン工場
コッペパン専門店のコバトパン工場
タマ助とハム助
タマ助とハム助