圧倒的な映像美と強烈な映像表現で伝えるパワフルメッセージ。
そんなことが体感ができるBLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)は、海の問題にフォーカスを当てて、将来への提案をするパビリオンだ。
万博だからこそやれること、やるべきことを追求した結果を展示、そして提示し、問いかけていて、エンタメ重視の他のパビリオンとは一線を画す存在かもしれない。
ブルーオーシャン・ドームは、3つの半球体からなるパビリオンで、ドームAは白に統一された空間の真ん中に超撥水の技術を使った素材の上を水が滑るように流れていく様を演出。自然界の水の循環を表現しているが、いつまでもずっと見ていられそうな美しさと安らぎのような感覚を感じた。
メインドームのドームBは、巨大なドーム内に巨大な凸面鏡の形をしたスクリーンがあり、そこに美しい映像が現れる。長期に渡る製作期間を経て完成した映像は美しくもあり、グロテスクな部分もあり、ガンガン訴えてくる。
最後のドームCは、雰囲気が変わって明るい空間にデジタル映像が流されていて、環境のエキスパートが登場人物として現れて、それぞれの専門分野から環境問題を語っている。他にも超純水の試飲ができたり、同館メッセージと連動する書籍の販売があったり。
同館はコンテンツだけでも見る価値があるが、その他にも建物自体、その建築にも見所があるのだ。
ドームAは竹を割って、蒸して、くっつけて集成材加工すると安定して木より強い強度を持つようになるのでそれを骨組みに使い、ドームBは世界初のカーボンファイバー炭素繊維強化プラスチックを主体構造として屋根を作り、ドームCは骨組みやイスのパーツとして段ボールを紙管にして使用、と次世代を見据えた素材でパビリオンを建築しているのだ。
↑ドームAの竹で組まれた骨組み
↑ドームAの竹で組まれた骨組み
↑ドームAの竹で組まれた骨組み
↑集成材加工された竹
↑集成材加工の工程
↑ドームBのカーボンファイバー炭素繊維強化プラスチック
↑ドームBのカーボンファイバー炭素繊維強化プラスチック
↑段ボールを使用したドームCの骨組み
↑段ボールを使用したドームCの骨組み
↑段ボールを使用したドームCの骨組み
↑段ボールを使用したドームCの骨組み
↑段ボールを使用したイスの脚
特にメインのドームBは、建築段階から閉幕後にはモルディブのリゾート施設に売却されて移築されることが決まっている準備の良さ。建物の軽量化に成功しているので、基礎を固定する杭を使わないため、ゴミを削減できる。また、竹や紙で作ったドームAとCは解体が簡単で、再利用しやすいという利点がある。
少し難しい話になるが、なぜブルーオーシャン・ドームがここまでこだわるかというと、海洋汚染を防止し、未来の海を守るためだ。現在1億5000万トンのプラスチックが海洋に漂っている事実を突きつけて、それを知った後、あなたがどうするかをたずねているのだ。
パビリオンの建設を担当した坂茂さんは、「万博というのは元々、新しい未来の実験の場だったものが、形だけのパビリオンがあるだけで、未来のための実験の場ではなくなってきている。万博の意義である実験性と将来に対しての可能性を試すチャンスにしたいという思いで、ブルーオーシャン・ドームを実現した」と話す。
「プラスチックは決して悪いものではない素晴らしい材料で、そのプラスチックをどう使っていくかということが、人間のこれからのマナーであり知恵。新しい素材と、竹や紙など古くからある素材を、新しい考え方で使うことで、新しい将来の建築の仕様となるような実験をここでやっていこうと考えております」とも付け加えた。
同館のテーマは「海の蘇生」。それをコンテンツや建築手法を通して今地球で何が起こっているのかを提示し、そのために何をすべきかを提示し、それを聞き知ったあなたがどういう行動を取るか、を問い、環境に対する意識の覚醒を促すことを目指している。
コンテンツのクオリティーは一見の価値ありのレベルだし、竹材や段ボールを使った工法も多くの人の興味を引くだろう。エンタメ系パビリオンで楽しみつつも、こういう本気で未来について訴えるパビリオンに行ってみるのも良いのでは。
常設のコンテンツ以外にも毎週、毎月様々なイベントも開催される。
同館のドームAとそれに続くドームBは、予約が必要だが、入り口が別にあるドームCは予約なしで誰でも入場可能で、気軽に中をのぞくことができる。