Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

大阪・関西万博が4月に始まってから、幾度も会場に足を運び、パビリオンの取材をしていますが、各国から来日された人たちと話をするのは本当に楽しい。
これまでの人生で縁のあった米国や豪州、シンガポール、マレーシアのパビリオンでは、当時の話で盛り上がり、これまで存在すら知らなかった国のパビリオンでは、それぞれの国の話が勉強になるし、得るものが多い。
万博に行くだけで、好奇心が刺激され、多様な価値観にふれ、物事の捉え方や考え方に影響を受けます。
海外の経験が比較的多い私でもそう思うのだから、普段海外との接点を持たない人なら、さらにそれを強く感じるはず。
特に関心を持ったのは、アフリカの国々の発展です。私は「(アフリカは)未開の大地で、政治も経済も遅れている」という印象が少なからずあったのですが、現実は全く違いました。
再生可能エネルギーを導入していたり、通信技術や先端医療に力を入れていたり、最先端の農業を展開していたり…。電気もガスも届いていなかった場所でも、太陽光パネルで発電し、衛星回線を使ってスマホを活用すれば、世界中のどこにいてもインターネットに繋がり、日本で得るのと同じ情報にアクセス出来てしまいます。加えて、歴史の影響で英語を話せる国も多いため、日本人より遥かに多くの情報にふれ、デジタルワールドの英語世界を渡り歩いているのです。
平均年齢が10~30代の国では、スマホを使いこなし、モノやお金、ネットワークがない中でチャンスをつかもうと必死に生きる人が大勢います。国も全面支援して、ICT人材を育成し、デジタル立国を目指しています。
そんな話を聞き、何でもそろう日本で「自分には何もないから、何も出来ない」という人たちの多さに将来への不安を感じてしまいます。
随分前から、海外の若者に接すると、常に前向きで将来を見据えた行動をとる姿に感心していました。日本の若者のように「タイパ」だ「コスパ」だという短略的な発想ではないことを、万博で改めて強く感じます。
パビリオンで働くスタッフも、日本人と外国人で比べると明らかに外国人の方が能力が高い、と思うことは多いです。しゃべれる言語の数に始まり、受け答えの正しさ、話の広がり、コミュニケーション能力など挙げるとキリがありません。
あと、各館の担当者らが残念に思っていることがあります。長時間並んで入館したのに、あちこちでパチパチと写真を撮るだけで、30分せず出て行く日本人が多いことです。私も取材をしていてそれを感じました。タイプAのパビリオンなら1時間か、それ以上かけて巡る内容になっている国が多く、「行った、見た、写真撮った」だけで終わるのはもったいない。
万博という格安の世界旅行で、各国の文化や習慣、価値観などにふれると、人生が変わるかもしれません。子どもたちや若者こそ会場に行ってもらい、多くの刺激を受けて、他にない体験をしてもらいたいものです。