どこまで進んだ? なにわ筋線 市内各所でつち音響く


▲西本町駅(仮称)の工事のため、車線規制が行われている立売堀周辺のなにわ筋(北向きに撮影)。奥に見える高架は阪神高速16号大阪港線

 大阪市西区や中之島を南北に縦断する府道41号、通称「なにわ筋」。ここ最近、街路樹が撤去され、車線規制が行われるなど〝筋全体〟が騒がしくなっている。2031年春に開業を目指す都市高速鉄道「なにわ筋線」の工事なのだが、目に見えて進んでいると期待が高まってくる。各工事現場で今、何が行われているのか、新線が誕生する場所を歩いてみた。

鉄道空白地帯に待望の駅

 西区では現在、中央大通あたりから、西大橋付近までの約700m区間に道路規制が掛けられている。なにわ筋線「西本町駅(仮称)」の工事に伴うものだ。

 この辺りは阿波座1交差点から見ると、最寄りは地下鉄中央線の「本町駅」と「阿波座駅」だが、両駅までそれぞれ500mほど離れている。南の長堀鶴見緑地線「西大橋駅」も約700mと遠く、都心部のわりに鉄道空白地帯になっている。

 ここに西本町駅が完成すれば、大阪駅(地下駅)に直接乗り入れられる。付近の住民にとっては梅田中心部に出るのが便利になるのは間違いない。

 地下約20mに造られる西本町駅は島式ホームで、ホームの両側を上下線が発着するスタイルとなる。

 ところで、この道路規 制がいつまで続くかだが、道路を元の状態に戻す復旧工事は28年3月ごろまで予定されている。つまり、あと5年は今のような状態が続く。

なんばに2つの南海駅

 なにわ筋線はJRと南海電車が相互乗り入れする路線になるが、西本町駅の南側でJRと南海電車は地下で上下に分岐。府民共済のビルが建つ北堀江と南堀江の境界辺りの地下で、なにわ筋から外れ、南堀江1丁目の下をなんばHatch方面へナナメに直進。JRは既存のJR難波駅に接続する一方、南海電車は「なんば駅前大阪伊丹空港行きバス停」辺りの地下約50mに造られる「南海新難波駅(仮称)」に接続する。南海はさらにパークス通に並行する阪神高速環状線の真下を南下し、Zeppなんばと木津卸売市場の間から地上に浮上。南海新今宮駅の手前で南海本線と合流する。

 ちなみに既存の南海なんば駅を使わないのはホームが3階の高さにある高架駅だからだ。もし同駅を使うなら、高島屋をぶち破って空中から飛び出し、ビルが建ち並ぶ繁華街を抜けなければならない。阪神高速がビを貫通している北区のTKPゲートタワービルのような景色を、ミナミで見てみたかった気持ちもあるが…。

福島駅高架下の踏切は残る

 では、再び西本町に戻り、今度はなにわ筋を北上してみよう。土佐堀川に架かる常安橋を超え、北区の中之島に達すると、またもや道路規制が現れた。なにわ筋線「中之島駅(仮称)」の工事に伴うものだ。


▲地下に南海新難波駅が造られる空港行きのバス停周辺

 計画によると、中之島駅の最深部は地下約50mで、上り線のホームの下階に、下り線ホームを設ける単式ホームの2層構造。京阪「中之島駅」とも接続できる位置にあるから、京阪沿線の住民は関空へのアクセスルートが増える。

 中之島駅のそばでは、巨大メディカルセンターの建設も進行中だ。未来医療の国際拠点として、再生医療をベースにゲノム医療や人工知能などを活用し、最先端医療の産業化を進めるという。開業は24年春だ。

 中之島をさらに北上し、福島区に入ってきた。国道2号と交わる浄正橋交差点の手前あたりから、オレンジ色の工事用フェンスが連なる。ここでは国道2号の真下を走るJR東西線の建設時に残った支障物の撤去が行われる。工期は25年度末まで。

 さらに北へ向かうとJR大阪環状線「福島駅」にぶつかる。このエリアは、福島駅を発着する列車が高架上を走り、関空特急「はるか」や特急「くろしお」が地上の線路、東海道線支線を走る2層構造になっている。なにわ筋線が開業すれば、はるかとくろしおはそっちの路線に移るから、地上の浄正橋踏切は撤去されるのかと思いきや、そうではない。


▲高架上にあるJR福島駅のホームを北側から撮影。地上の東海道線支線は「はるか」「くろしお」が通る

 貨物列車はこの東海道線支線を従来通り走るので、踏切は残される。

 ただ、うめきた2期開発の流れで、この東海道線支線も地下化が進められており、23年3月には浄正橋踏切を超えたあたりでトンネルに入り、うめきた2期の地下を抜ける路線に切り替わる。このため、梅田ランプ西交差点の踏切は除去される。

 さあ、新線のルートは福島駅手前で、なにわ筋とお別れ。駅の地下を右折して環状線の真下を抜け、うめきたに向かわせる。このため現在、地下30m辺りまで伸びている環状線の高架を支える杭を切断して新たな基礎に受け替え、新線を通すシールドトンネルの地下空間を確保しなければならない。この作業は27年度末まで行われる予定だ。

 最後に気になる運行ダイヤだが、それは未定。南海電鉄の広報に尋ねても「まだ発表できるものが何もない」とのこと。楽しみに待とう。


  • ▲中之島駅(仮称)が造られる場所。右の建設中の建物は巨大メディカルセンター

  • ▲23年春にうめきたの地下に開業する「大阪駅」の工事現場

都市高速鉄道「なにわ筋線」


※現在の所要時間は最速の場合。開業後の所要時間は現時点での平均所要時間の想定。

 大阪市内を南北に貫く新線で、2031年春に開業予定。JR大阪駅北側の再開発区域「うめきた2期」の地下に整備するうめきた(大阪)地下駅とJR難波駅、南海電鉄新今宮駅を結ぶ建設延長7.2キロmの新線。

 完成すれば、大阪市中心部から関西空港へのアクセスが向上するほか、地下鉄御堂筋線や難波駅などの乗り換えターミナル駅の混雑が緩和されることが期待される。現在、JR大阪環状線を利用している特急「はるか」「くろしお」や関空快速もなにわ筋線へ振り替えるので、所要時間が短縮する。特に大阪駅に特急が停まるようになるのが大きい(現在、直通は関空快速のみ。特急利用には天王寺駅などで乗換の必要あり)。