大阪で10年ぶりの「発掘された日本列島」展 弥生文化博物館と近つ飛鳥博物館で開幕

 全国各地で行われる遺跡調査の成果を紹介する巡回展「発掘された日本列島2024」が10年ぶりに大阪で開幕した。府立の弥生文化博物館(和泉市池上町)と近つ飛鳥博物館(南河内郡河南町)の2館合同開催で12月8日まで開かれている。北海道や東日本の遺跡を中心に出土した約560点を展示。10月5日の初日から考古ファンなどでにぎわった。

アイヌの装身具、ニンカリ(耳飾り)とタマサイ(首飾り)の展示=近つ飛鳥博物館
弥生土器の説明を聞きながら、興味深く観察する来場者ら=弥生文化博物館

石を熟知した旧石器人の高い技術も

 弥生博の中核展では、〝旧石器時代の大石器工房〟と題した北海道今金町のピリカ遺跡を取り上げている。目玉の一つは頁岩(けつがん)でできた30㌢以上の石刃と石刃核が接合した資料で、石刃の打ち割りに必要な力を一点に集中させる高度な技術を垣間見ることができる。現代の研究者にも製作の再現が難しいと言い、石を熟知した旧石器時代の人々の高い技術力をうかがい知ることができる。

旧石器時代のピリカ遺跡(北海道今金町)から出土した石刃接合資料=10月5日午前、弥生文化博物館

 このほか「新発見考古速報」として、縄文から弥生時代の遺跡から出土した土器や土偶なども展示している。

 一方の近つ飛鳥博では、古墳時代の〝ぴったんこ〟の埴輪(はにわ)が目玉の一つ。群馬県の赤堀茶臼山古墳で出土した大型の「鶏形埴輪」がそれで、古墳から約3㌔離れた釜ノ口遺跡で出土した埴輪片と、約1500年の時を経て接合した。

別々の場所で保存されていた破片が「再会」を果たした埴輪の展示=近つ飛鳥博物館

 また、「新発見考古速報」では、古墳時代から近世の遺跡を取り上げている。

 2館では同時に地域展も併催しており、弥生博では干支の「辰」にちなんで弥生時代に中国から伝来した「龍」を取り上げている。大阪には古墳の副葬品や寺の梵鐘、陶磁器の装飾など「龍」にまつわるさまざまな考古資料や民俗資料が数多く存在しており、府内の資料を中心に展示し、その源流に迫る。

 近つ飛鳥博の地域展では、同館周辺に約250基の古墳がある一須賀古墳群の出土品の中から、渡来人の影響が色濃いミニチュア炊飯具、金属製やガラス製の装身具などを展示している。

 近つ飛鳥博の舘野和己館長は「列島展は今回で30回目。本館の開館も今年で30周年。隣接する『一須賀古墳群』も国の史跡に指定されて30年という節目の年。遺跡はさまざまなことを私たちに語ってくれる。その声に耳を傾けてもらえたら」と話していた。

■府立弥生文化博物館
期  間/開催中〜12月8日(日)
開館時間/午前9時30分〜午後5時(入館は同4時30分まで)
休  館  日/月曜日(10月14日、11月4日は開館)
入  館  料/一般650円、65歳以上・高大生450円
(中学生以下、障がい者手帳を持つ人と介助者1人は無料)

■府立近つ飛鳥博物館
期  間/開催中〜12月8日(日)
開館時間/午前10時〜午後5時(入館は同4時30分まで)
休  館  日/月曜日(月曜祝日の場合は火曜休館)
入  館  料/一般650円、65歳以上・高大生450円
(中学生以下、障がい者手帳を持つ人と介助者1人は無料)
※関西文化の日(11月16、17日)はいずれも入館無料

鶏形埴輪について解説する文化庁の桑波田さん=10月5日午前、近つ飛鳥博物館