大阪府初 公園に就労支援事業所を設置

今年10月、鶴見緑地にオールケアプロが開設

 大阪市鶴見区の花博記念公園鶴見緑地に10月1日、障害がある人が園内作業を行う就労継続支援B型事業所「オールケア鶴見緑地」が開業する。公園に社会福祉施設が設置されるのは大阪府初、全国でも珍しい試みだという。その背景を取材すると、障害のあるなしに関わらず「共に暮らす社会」の実現を公園が担う可能性が見えてきた。              

民活で生まれ変わる都市公園

 大阪市では民間による「公園の再生」が加速している。天王寺公園が「てんしば」に、大阪城公園が「ミライザ・ジョーテラス」にリニューアルしたことは記憶に新しい。いずれも老朽化した施設や設備を再整備し、魅力的なカフェ・レストランなどを誘致。「古く、暗く、汚い」イメージが払拭され、幅広い世代の人に愛される「集客力のある公園」に生まれ変わった。

 鶴見緑地も同様に、2020年4月から大和リースを代表事業者とする「鶴見緑地スマイルパートナーズ」を指定管理事業者に選定。23年には公園のシンボルである大池に面したロケーションにカフェ&レストラン「ボタニカルハウス」がオープン。トヨタ自動車が開発した次世代モビリティを公園に全国初導入するなど「再生」が進んでいる。

障害の垣根を越えた公園に

 「〝障害がある方にも開かれた公園にしたい〟という思いは構想段階からありました」と話すのは、大和リース大阪本店規格建築第一営業所上席主任の池田昂志郎さん。服部緑地や泉南りんくう公園などを手がけた、都市公園再生の「仕掛け人」だ。

 「日本の障害者の総数は964・7万人。人口の約7・4%に相当する。公園は公共施設であり、障害のあるなしに関わらず、利用できる場所でないといけない」と強調する。その言葉通り、同公園には障害がある子もない子も一緒になって遊ぶことができる「インクルーシブ遊具」を設置した「つるみっこパーク」が新設され、子どもたちの笑顔が弾けている。

障害の垣根を越えて遊ぶことができる「インクルーシブ遊具」

 17年に改正された都市公園法において、保育所、学童クラブ、老人デイサービスセンター、障害者支援施設など「社会福祉施設」の公園内占用が許可され、都市公園をより柔軟に、現代社会のニーズに合わせて活用できるようになった。そして、今年10月、園内作業を行う管理事務所として、鶴見緑地に就労継続支援B型事業所を開設することになったのだ。

医療的ケア児を積極的に受け入れ

 同事業所を運営するのは、オールケアプロ(守口市)。重症心身障害児・者や医療的ケア児・者を対象に児童発達支援や放課後等デイサービス、生活介護などの障害福祉サービスを展開するオールケア・グループ(同市)の企業だ。医療的ケア児は、たんの吸引や経管栄養などが日常的に必要な児童のことで、医学の進歩を背景にここ10年で2倍に急増している。医療的ケアは看護師もしくは研修を受けた職員のみが対応できるため、保育園や放課後等デイサービスなどでの受け皿が整っていないことが社会課題になっている。

 「行き場のない医療的ケア児・者を積極的に受け入れる」という信念のもと、同グループでは専門スタッフの育成に注力し、北河内・北摂エリアを中心に26事業所を構え、1500人を超える契約者が利用している。

 大和リースで営業を担当する瀧本健太さんは「医療的ケア児の受け入れに強みがあるオールケアさんは我々にとって〝尊い法人〟です。〝公園施設〟として誕生する就労支援事業所の公益性を理解し、担ってくれる心強いパートナーだと確信している」と話す。

医療的ケアを行うオールケア・グループのスタッフ

生活介護事業所も新設予定

 10月に開業する同事業所の当面の仕事として、鶴見緑地西側エリアの園路掃除を担当する。仕事は公園内の業務に限られるが、花壇の整備や養蜂事業なども検討されているという。また、同事業所の隣接地に同グループが運営する重症心身障害児・者や医療的ケア児・者を対象にした生活介護事業所を設置する計画も進行している。

 同グループの鎌倉義雄代表は「まずは任された仕事を全うし、公園内を今まで以上にピカピカに清掃することで存在価値を高めたい。その後、生活介護事業所と連携し、重度の障害がある人も公園で日中活動ができるようになれば、社会的にも大変意義のあるものになる」と力を込める。

 「障害がある方が公園で日常的に働くことで多くの市民と接触する機会が増えるだろう。それこそが健常者も障害者も関係なく、共に暮らす社会の実現につながるのではないか。オールケアさんとタッグを組み、この事例を全国の公園に展開していきたい」と池田さんは意気込んでいる。

オールケア鶴見緑地の管理者・二宮大輔さん(写真右)とオールケアプロの管理者・波多野聖悟さん