【外から見たニッポン】米大統領選 民主党候補 カマラ・ハリスが犯罪増に加担?

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 米ニューヨーク州立大ビンガムトン校卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」「情熱大陸」「ブロードキャスター」「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、ディスカバリーチャンネルやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 先日の民主党党大会を経て、米大統領選挙の候補者が正式に出そろいました。

 党大会で最後に登壇し、大統領候補の受託演説を行ったハリス候補。検事や州司法長官を経験した法の番人だという点を強調しましたが、責務を果たした以外に、疑問符を打たれる行動があったのも事実。

 ハリス候補が地方検事を経て、米カリフォルニア州の司法長官として2期目が始まった2014年。「提案47 安全な近隣と学校法」という法案が議会を経て、州の住民投票でも多数を得て可決されました。

 当時、同州の刑務所は許容人数の倍以上の犯罪者を収容していて、受刑者の人権が問題になっていました。その上、最高裁から2年以内に3万人以上の収容者を減らすよう命令されていました。

 そこで考え出されたのがこの「提案47」という法案。暴力を伴わない950㌦以下の窃盗や万引き、違法ドラッグにかかる犯罪の刑罰を、これまでの重罪から軽犯罪に格下げし、禁固刑の対象から外したのです。

 この法律によって、950㌦以下の窃盗や万引きは刑務所へ行かなくてよくなり、堂々と犯罪が行われることになったのです。刑務所へ収容者数は減っても、これでは私は本末転倒だと思います。

 さて、この法案可決のプロセスに、ハリス候補はどう関わったのか。彼女は原案や名称を作成するメンバーで、同法を執行する立場にあったため、法案の支持・不支持の態度を明確にしませんでした。しかし、彼女の取り巻きは可決に奔走しています。

 「安全な近隣と学校法」という名称からは、中身が想像しづらく、意図的に住民に誤った印象を持たせたとも言われています。

 もし、名称が「重罪犯の刑を軽犯罪に分類する法」だったら、住民投票の結果は? 州司法長官だったハリス候補が反対していたら結果は違ったかもしれません。

 法案可決後の2014年から、州内の犯罪が激増。特にハリス候補の地元サンフランシスコは酷い状況でした。その後なだらかに減少していましたが、コロナ禍で失業者が増え、再び窃盗や万引きが激増。捕まっても刑務所へ行かなくて済むことから、白昼堂々と万引きしたり、集団で店を襲撃する者も現れ、多くの店舗が閉鎖に追い込まれる事態にあります。

 この状況にトランプ候補は「全てハリス候補のせい。もし彼女が大統領になったら、米国中が犯罪であふれかえってしまう」と声高に訴えています。

 ただ、全米レベルでは、同州の「提案47」と同様の法律は多数の州でも可決されており、また同法の有無に関わらず、大都市での犯罪はコロナ以降増えています。。

 こうした中、同州は状況を改善するために「提案36」という法案を準備。「提案47」の対象の犯罪でも2回以上犯せば重罪扱いで刑務所行き、という内容です。

 犯罪者数や刑務所の状態、被害状況など、米国はすでに酷い状況にあり、刑務所がいっぱいだから犯罪の刑を軽くする発想自体、理解に苦しみます。

 確かに私が米国にいた頃から刑務所の定員オーバーが問題になっていましたし、学校の建設費用より刑務所の建設費用の予算が遥かに多い状態でした。

 貧困で行き場のない移民を継続的に受け入れ、国民の間に過度な格差があり、人種や宗教、肌の色、階級などさまざまな差別がはびこる米国で、犯罪者を減らすのはほぼ不可能で至難の技です。

 トランプ候補のように重罪を言い渡されても〝我れ関せず〟で堂々と生きる人もいますし…。