抗がん剤の副作用による抜け毛の悩み

治療を乗り越えるための手助け

アピアランスケアとは?

診察中の加来信子院長(右)

 国民の2人に1人が罹患するといわれるがん。治療法のことは知っているが、治療後の影響について、知らないことも多い。特に女性特有の乳がんや子宮がんなどで治療を始めると、抜け毛など高い確率で外見の変化が起こる。そんな時に助けになるのが「アピアランスケア」だ。毛髪の悩みをメーンにアピアランスケアを行っている「クレアージュ大阪」の加来信子院長に話を聞いた。

―アピアランスケアとは?

 アピアランスには外見という意味があり、がんやがん治療の副作用で起こる見た目の変化に対応するケアのことです。外見の変化で日常生活で支障をきたすようになったり、ストレスを抱える人に対し、ウィッグや人工乳房、メークなどを用いたサポートであったり、悩みを打ち明けたりすることで心理的な負担を軽減することを目指すものです。

―なぜ、がん治療で外見に変化が起こるのか?

 点滴で行う抗がん剤治療は、全身に薬が行きわたるので、がん細胞だけでなく、ほかの細胞にも影響してしまう。特に毛髪や爪など、細胞の代謝が早い部分に影響が出てしまうため、脱毛や爪の変形、肌の黒ずみなどが起こる。完治すればがん治療は終了するが、影響が出た箇所が元に戻るには時間がかかります。

―外見の変化はいつから、どのようなものか?

 抗がん剤の投与開始から2~3週間で脱毛がはじまる。この期間は帽子やウィッグやつけ毛などを利用するのが一般的。治療後、3~6カ月後には徐々に毛が生えてくると言われているが、元の髪質と違い、細くて柔らかく、元のボリュームを取りもどせないことが多い。

―ほかの治療法でも外見の変化はあるか?

 抗がん剤以外でも、乳がんの増殖に関連する女性ホルモンの働きを抑えるホルモン治療の影響で、髪にハリがなくなって悩む人もいます。

―外見を元に戻すにはどうすれば

 毛髪に関しては治療後、半年から1年経過しても戻らない人や、早く髪を生やしたい人には、発毛治療という選択肢もあります。血行促進の有効成分であるミノキシジルの外用薬で発毛させます。市販薬もあるが、診察を受けて頭皮の状況に合わせた濃度を処方するのがよい。新型コロナウィルスの後遺症の抜け毛「コロナ抜け毛」にも発毛治療は有効です。

―今後のアピアランスケアについては

 アピアランスケアと聞いて「健康だから関係ない」と思うかもしれないが、国民の半数がかかるがん。自分だけでなく、知人が乳がんの治療で外見の変化が起きると、ふさぎ込んでしまうかもしれません。そんな時にアピアランスケアがあることを伝えることで、前向きになれたり、治療中の励みにもなるはず。多くの人にアピアランスケアを広めていきたい。

【院長 加来信子(かく のぶこ) プロフィル】
1992年3月 島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
1992年5月 島根大学医学部附属病院皮膚科入職
2001年6月 大手美容皮膚科入職
2011年10月 脇坂クリニック入職(現Dクリニック大阪)
2023年11月 クレアージュ大阪 院長就任

■クレアージュ大阪/大阪市北区梅田3-3-20明治安田生命大阪梅田ビル22階/電話0120(697)666
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