レンタルスペースで喫茶店運営 現役大学生の矢野さん 産地、焙煎、入れ方にこだわり

週一で喫茶店を運営する矢野さん(左)とスペースを貸し出した角倉代表
週一で喫茶店を運営する矢野さん(左)とスペースを貸し出した角倉代表

 レンタルスペースを毎週木曜日に間借りし、喫茶店を営業している若者がいる。矢野智英さん。同志社大学経済学部に通いながら、「ふぃあろ珈琲」の屋号でマスターをしている。

 「自分が提供するコーヒーを誰かに飲んでもらいたいと思い、営業できる場所を探していた」と話すのは大学2年生の矢野さん。豆は産地にこだわり商社から購入。さらにコーヒー焙煎機の時間貸しを行う焙煎所で自らローストする。

 それでも「もともとコーヒーが特段好きでもなかった」という矢野さん。コーヒーサークルのコミュニティーや環境に魅力を感じて入会したことを機に、コーヒーそのものに魅了されていった。

 活動は大学の枠を超え、大阪大や立命館大など他校の学生とも交流を図るようになり、スタッフが全員大学生という東淀川区の実店舗「喫茶あおい」でも店に立っている。10月には、コーヒーを通じた地域活性化イベント「ジャパンコーヒーフェスティバルin吹田」にも出展した。

 営業を週一だけに絞っているのは、大学との両立のためだ。矢野さんが見つけた場所は大阪メトロ堺筋線・谷町線「南森町駅」、JR東西線「大阪天満宮駅」から徒歩6分に位置する「レンタルスペースUNO(ウノ)」。43平方㍍ほどの店内は、バーのような造り。キッチンカウンターが8席、ボックスが8席で、最大24人まで収容できる。冷蔵庫や製氷機、コンロは備え付けで、コーヒーミルや道具は持参した。「豆の品質はもちろん、引く粗さ、注ぐ温度、器具、人などで味が変わる。同じようにやっても同じ味にならない奥深さがある。それを追求したい」と思いを語る。

 コーヒー以外にもこだわりを持ち、ケーキやクッキーなどを手作りで提供している。

繁忙期以外の活用と若者支援で貸し出し

 一方、レンタルスペースを所有・運営するエスケー不動産管理(大阪市北区)にとっても運用面の悩みがあった。週末や歓送迎会、忘年会シーズンなど繁忙期以外の活用だ。角倉一(すみくらまこと)代表は「コロナ禍では、飲食店休業の影響や他人との接触を避けるため、仲間内で楽しむ利用客が多かったが、通常生活に戻り稼働率が低下した。何とかしたいと思っていた」と話す。

 これまでも間借りしたいという相談はあったが、事業内容や計画性の問題で契約に至らなかった。矢野さんに貸し出したのは、熱意と若者支援の観点だ。「学生が事業をすることに協力できたらと思った。応援の意味を込めてレンタルスペースとして貸し出すよりスペース代を廉価に設定
した」(角倉代表)。

就活専念のため来春で営業終了予定

 矢野さんは将来、喫茶店で独立するつもりはなく就職する予定だそう。就活のため、運営は来春までだ。だからといってコーヒー提供に抜かりはない。「年齢を重ねてから自店を持ちたい。それまで10─20年は社会人として働きたい」。貸主の角倉代表は「矢野さんの将来設計には感心する。長く借りてほしい気持ちはあるが、春以降は就活に専念し納得いく活動をしてもらいたい」とエールを送る。

 「ふぃあろ珈琲」は毎週木曜午前11時から午後5時まで営業。コーヒーは500円から。飲み比べも用意している。