中国客41%に減も次の一手へ 大阪観光局が定例会見 ナイト観光や相撲で市場開拓 レイクレも発信役に

訪日外国人客について「中国が大きく落ち込んでいる」と話す溝畑理事長(編集部撮影)

 大阪観光局は9月30日、定例の記者会見を開き、足元の観光動向と秋以降の新たな観光施策を発表した。

 大阪を訪れるインバウンド市場で、中国客の減少が鮮明になっている。8月の訪日外国人客数は中国が前年比41.0%と大きく下回ったことが影響し、全体では90.4%となった。一方で、中国を除く来訪者は126.7%と伸びた。韓国、台湾、香港などの東アジアや、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、米国など複数の国が8月として過去最高を記録した。

 関西空港では東南アジアを中心に航空便の新規就航や増便も進んでいる。大阪観光局がホテル関係者などに聞き取ったところ、10、11月の予約状況は前年を上回り、特にラグジュアリー系ホテルで堅調な動きがみられるという。

 溝畑宏理事長は中国市場について「経済や文化の交流は政治とは切り離して続け、いつでも復活できるよう準備を進める」とする一方、中国以外の市場が伸びていることを強調した。

 海外18カ国7200人を対象にした調査では、大阪の認知度や訪問意向が上昇。一方で「夜遅くまで楽しめる」「ラグジュアリー」「文化芸術」「スポーツ」などのイメージは十分に浸透していないことも明らかになった。このため、弱点の補強を進める観光施策を打ち出した。

劇場は大阪の街そのもの 文化万博始動

 その一つが、この秋に始まる「大阪文化万博」の取り組みだ。

 10月8日から11月8日まで、都市型文化芸術フェスティバル「大阪フリンジ」を開催。大阪市内の劇場や商業施設、歴史的建築物、カフェ、ギャラリーなど50会場以上を舞台に、演劇やダンス、音楽、伝統芸能、現代美術、ワークショップなど100組以上のアーティストや団体が参加する予定。

 大規模ホールに観客を集める従来型のイベントではなく、街中の多様な空間を舞台にするのが特徴。観光客、地域住民、演者をつなぎ、街そのものを文化芸術の発信拠点にする狙いがある。

 世界最大級の芸術祭として知られる英エジンバラの「フリンジ」などを参考に、大阪独自の文化イベントとして定着させたい考えだ。観光局では、海外から見た大阪には文化芸術を楽しむ都市というイメージがまだ弱いとして、継続的な開催を通じて認知向上を図る。

「大阪の夜、まだ伸びる」 官民でナイトエコノミー

 夜間の観光消費を増やす「ナイトタイムエコノミー」も重点施策に据える。

 会見にはSBIホールディングス・ブロックチェーン推進室の栗島昭仁さんが登壇。昨年12月に立ち上げた「EXPO NIGHT PARKコンソーシアム」には約130の企業・団体が参加し、「夜間観光の事業化を検討している」と説明した。

 SBI側が外国人1172人を対象に行った調査では、「大阪は女性一人でも歩けるほど安心だが、夜に遊ぶ場所が少ない」といった声があったという。そこで関空に隣接するりんくうエリアで10月、夜間イベントの実証実験を行う。周辺ホテルとも連携し、AIを活用したセキュリティーなど新技術の導入も検証する。

 11月13、14日には心斎橋・難波エリアでも音楽、文化、エンターテインメントに飲食や買い物を組み合わせた企画を予定。街を回遊してもらい、夜間の消費拡大につなげる。

 観光局は2030年を見据え、関空・泉州から難波、心斎橋、夢洲までをつなぐ夜間観光の動線づくりを目指している。

水都は夜が主役 中之島クルーズ

中之島周辺で定期運航するナイトクルーズについて説明する仲井さん(左)

 「水都大阪」の夜景を観光資源にする新たなナイトクルーズも始まる。

 JTBの観光開発プロデューサー仲井牧子さんが「大阪ナイトストリーム」について紹介。大阪府・市が主催し、JTBや京阪グループ、大阪水上バス、一本松海運などが連携して中之島周辺で定期運航するナイトクルーズを開発した。

 コースは大きく二つ。大阪城公園の船着き場を起点とする東側では、大阪城など都市の夜景に加え、大阪の食文化を組み合わせる。淀屋橋港まで運航し、観光だけでなく移動手段としての利用も想定する。

 西側は堂島浜から中之島ゲート方面へ運航。ライトアップされた中之島の橋や水辺の景観を楽しみながら、船内ではスイーツやドリンクなども提供する。

 仲井さんは「夜景と飲食を組み合わせたラグジュアリーな観光コンテンツとして育て、将来的には民間主体で継続運航できる事業を目指す」と強調した。

北海道の「女相撲」が大阪へ

 日本の伝統文化を観光につなげる取り組みとして、北海道福島町で長年続く女性だけの相撲大会も大阪にやって来る。

 「SUMO EXPO 女だらけの相撲大会」が11月14日、OMO7大阪 by 星野リゾートの芝生広場で開催される予定で、18歳以上の女性を対象に64人を募集し、無差別級で競う。

 福島町は横綱・千代の山、千代の富士を輩出した相撲の町として知られ、女性による相撲大会も30年以上続けている。観光局では2025年大阪・関西万博でも相撲を通じた文化発信に取り組んでおり、その流れを継続する。

 会見には今年の大会優勝者「まこデラックス山」さんと、過去に5度の優勝経験を持つ「おでぶ山」さんが化粧まわし姿で登場。四股や相撲の所作を披露した後、実際に取組も行い、会場をわかせた。

 まこデラックス山さんは「女性同士の相撲でも迫力があり、見ている人が楽しいと思える相撲を意識している。大阪なら関西や関東からも参加しやすいので、力自慢の人に集まってほしい」と呼びかけた。

取組を披露する「まこデラックス山」さん(右)と「でぶ山」さん

登録者280万人の「レイクレ」をPRサポーターに

 情報発信では、若い世代への訴求力を持つクリエーターとの連携にも乗り出す。

 大阪観光局は新たに、YouTubeのチャンネル登録者数が280万人の5人組ユーチューバー「Lazy Lie Crazy(レイクレ)」をPRサポーターに委嘱した。メンバーはいずれも大阪出身で、守口市など大阪を拠点に活動。海遊館やユニバーサル・スタジオ・ジャパン、新世界など大阪を舞台にした動画も数多く配信している。

 メンバーは会見で、大阪の歴史や観光地を動画企画を通じて改めて知った経験などを紹介し、「まだ知らない大阪の魅力を知り、YouTubeを通じて発信していきたい」と抱負を語った。

 今回の橋渡しに尽力した大阪観光局エグゼクティブアドバイザーの阪本晋治さんは、自身も守口市に住み、レイクレが同市を中心に活動していることが接点になったと説明。「若い世代の視点や、登録者数を増やしてきたマーケティングの力を、大阪観光の情報発信にも生かしてもらいたい」と期待を寄せた。

PRサポーターを委嘱されたレイクレのメンバーら

 中国市場の減少という変化に直面する大阪観光。一方で、来訪市場の多様化は進み、万博後を見据えた新たな観光づくりも動き始めている。文化芸術、夜、水辺、伝統文化、そして若い世代の発信力。観光局では既存の観光地への集客だけに頼らず、街が持つ多様な資源を組み合わせながら、「世界から選ばれる大阪」の裾野を広げたい構えだ。

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