北海道から大阪、そして世界へ 理美容の世界大会に挑む20歳

「金メダルを取って家族に会いに行きたい」と笑顔で意気込みを語る森さん=6月9日、グラムール美容専門学校前(編集部撮影)

 9月22日から中国・上海で開かれる第48回技能五輪国際大会(WorldSkills 2026 Shanghai)の理美容(ヘアドレッシング)職種における日本代表に、グラムール美容専門学校(大阪市中央区)に在籍する森千津さんが選出された。

 前回にあたる2024年のフランス・リヨン大会では、同校出身者である濱吉優希さんが同職種において日本人史上初となる金メダルを獲得しており、後輩にあたる森さんにもおのずと期待が高まっている。世界の頂点を目指す、若き挑戦者を取材した。(西村由起子)

真剣な表情でハサミを入れる森さん。日々の練習が世界の舞台につながる=グラムール美容専門学校

 北海道士別市出身の森さんの、幼い頃からの夢は「美容師」。そのきっかけを作ったのが、美容師だった今は亡き伯母の存在。「伯母に髪を切ってもらうと明るい気持ちになれた。私も伯母のようになりたいと思った」と振り返る。

 そんな森さんとグラムール美容専門学校との出会いは、北海道で開かれた学校説明会。技能五輪や全国大会で多くの実績を持ち、世界を目指せる環境が整っていることに惹かれて進学を決意。

 早速、自宅に戻って家族に相談したところ、父もかつて技能五輪全国大会に出場していたことが判明。驚いたものの「私も目指したい」という思いがますます強まった。美容師になるという夢に加え、技能五輪出場という新たな目標が生まれた瞬間だった。

 北海道を離れ、単身で大阪へ。入学後は放課後や休日も練習に打ち込み、競技課題の習得に励んだ。森さんは自身について「目標を決めたら諦めない性格」と話す。高校時代には商業高校で学び、複数の1級資格を取得。その粘り強さは美容技術の習得にも発揮された。

 やがて練習は生活の一部となり、放課後はもちろん、休日も学校に残って鋏(はさみ)を握る毎日。気付けば練習時間はカリキュラムを大きく上回るようになり、「できるようになってくると楽しくて、今では練習が趣味です」と屈託なく笑う。

 努力は着実に実を結び、大阪代表を経て、2025年の技能五輪全国大会では美容職種で金賞を受賞。入学当初から掲げていた目標を実現し、見事、日本代表の座をつかんだ。並大抵の努力では到達できないポジションだ。

 9月に控えた世界大会には32カ国の代表が出場する。国によっては中学校卒業後から理美容教育を受けている選手もおり、同じ年代でも経験値には大きな差があるという。

 森さんが出場する職種は、美容技術の総合力が問われる競技として知られ、4日間で計7課題を競う。カットやカラー、ブロー、アップスタイルに加え、理容分野の技術も求められる。競技開始15分前に提示された写真を基に髪形を再現する課題もあり、モデルごとの髪質や骨格を見極めながら仕上げなければならない。応用力が注目される競技だが、その土台となるのは基礎技術の積み重ねだ。施術中の接客態度や作業環境への配慮も審査対象となり、技術だけでなく対応力や人間性も問われるのだという。

 森さんに寄せられる周囲の期待と本番へのプレッシャーが半端ないなか、彼女を支えているのは「積み重ねてきた練習」が生み出す自信だ。指導教員も「反復練習は誰でも嫌になるものですが、森さんはやろうと決めたことを続けられる。その積み重ねを自分の力に変えられるのが強み」だと評価している。

世界大会への抱負を語る森さん。競技への思いと素顔をのぞかせた=グラムール美容専門学校(編集部撮影)

 「本番では緊張しません。苦手も得意に変えられるほど、練習してきていますから」

 森さんにとっては世界大会もあくまでこれまで積み重ねてきた練習の成果を発揮する場に過ぎないということか。

 現在は本番に向けた強化訓練を続ける傍ら、オーストラリアや中国で開かれるプレ大会への参加も控え、忙しい日々を過ごしている。「今は忙しくて北海道に帰れていないので、金メダルを取って家族に会いに行きたい」と等身大の笑顔を見せてくれた森さん。愛らしさと頼もしさに溢れる彼女の今後が楽しみだ。

自ら手がけた競技作品と笑顔を見せる森さん=グラムール美容専門学校
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