Spyce Media LLC 代表 岡野 健将
政府は24年度から社会保険(社保)への加入条件を変更し、加入者増を目指す方針の様です。これまで扶養控除内でパート等の仕事をしていた人の中にも社保への加入が義務づけられる事になりそうですが、皆さんにとって、それは良いことなのでしょうか?
私は帰国当初、この公的保険の仕組みに困惑した事を覚えています。なぜサラリーマンの妻(夫)は社会保険料を払わないのに加入出来るのか?なぜ個人事業主や自営業者は社保ではなく国民健康保険(国保)なのか?なぜ働き方や立場(属性)で加入条件や享受出来るメリットが違うのか?など。
アメリカでは正社員もアルバイトもフリーランスも同等に所得税とともに、Social Security Tax(SST)という社会保障税が徴収されます。収入があればどんな人でも支払う義務があり、市民であろうが学生であろうが外国人であろうが全労働者に対して平等に課税される仕組みです。
学生のとき、学校から許可を得て寮のカフェでバイトをしていたときも給料から税金とSSTが天引きされていました。当時最低時給であった時給4・5㌦で1日3時間、週5日で67・5㌦稼ぎ、そこから約2割が引かれていました。当時は5日働くと5日目は無料奉仕になる、という感じで理解していました。
大学卒業後に就職したときは給料から所得税とSSTが天引きされていましたが、天引きされる額は大体給料の3分の1でした。アメリカでは働き方がどうであれ、収入を得ていれば各個人で税金申告をする必要があります。日本で言う確定申告を全員がすると思ってもらえれば良いと思います。
これは学生もパートもアルバイトもフリーランスも正社員も自営業者もみな同じです。その申告の中で収入から経費を差し引いた課税所得額から所得税や他の税金とともにSSTを計算して各自が税務署へ納付します。そのため外国人であっても就労時にSSTを納付していた私にも年金を受け取る権利はあります。誰であろうと収入を得たら税金(SST)を収める。至ってシンプルで平等なシステムです。
それに対してサラリーマンと公務員が労働者の大部分を占めた日本の社会保険の仕組みは、彼ら以外を例外として扱う様になっていることが根本的に間違っていると思います。特に昨今はさまざまな雇用形態が出てきているのに、その存在を良しとせず、あくまでも正規雇用者だけがあるべき姿かの様に捉え、時代遅れな社会保険のシステムを維持するために悪あがきの改変を行おうとしている様にしか思えません。
実際、フリーランスやパートという形態で働きたいと思っている人もいれば、起業したり、やりたい事があるからそれが実を結ぶまではバイトでいい、と思っている人もいます。これからの時代、正規雇用されても経済的にゆとりのある生活をしてゆく事が難しい時代になっていくので、より自由な働き方を奨励し、いびつな社会保険のシステムをよりシンプルで平等なモノに変えていくべきだと思います。
しかし、政府がやろうとしている変更はどうも違う方向へ向かっている気がしてなりません。皆さんにとってこの変更は改悪ではないのですか?