山形出身の演歌歌手、羽山みずき(34)が12枚目のシングルCD「お湯割りで」でデビュー10周年を迎えた。お隣の秋田美人に対し「嫁に貰うなら山形から貰え」のことわざ通り、彼女は堅実で我慢強い庄内美人の典型。派手さはないが,落ち着きの中に見える天性の女子力の高さが、男性ファンを魅了しジワジワと支持を広げている。

進学校の県立鶴岡北高を卒業、地元の出羽三山神社の巫女職に。6年後25歳でプロ歌手にスカウトされ上京。おっとりした性格の彼女を心配した周囲からは「東京は怖いところ。お宮に籍を置いて頂き、困ったら戻れる場所として確保しておけば?」と勧められ涙がこみ上げたが、逆に「いや、甘えてはいけない」と決意を込めて芸能界に飛び込んだ。「幅広くいろいろなお仕事のお話しを頂戴しますが、私は器用では無いのでまず歌の世界で一歩ずつ」と地道にコツコツ歩んでいる。

新曲は師匠・聖川湧が軽演歌とも言えるフォークタッチの曲を書いてくれた。「歌いやすい曲なのでファンの皆さんも親しみやすいと思います。〝合ってるよ〟と言って下さる方が多くうれしいです」と手応えにホッとした表情。カップリング「恋はリバーサイド」は70年代ディスコをモチーフに彼女らしくアレンジした軽快なテンポで、庄内の母なる最上川や名産サクランボなどが登場し、彼女らしく郷土愛あふれる内容。「私、自宅のネットで旧作映画見るのが好きなんです。ジョン・トラボルタの『サタデーナイト・フィーバー』(1978年日本公開)を最近見て、当時のディスコの雰囲気にあこがれて」と背景を説明。
彼女の性格を如実に表すエピソードがある。毎年、正月は故郷・鶴岡市の自宅に戻るが必ず年が明けてから東京の住まいを後にする。「神棚がありますから1年の終わりはそこから神様がお社にお帰りになる。そうしたら神棚をきれいにしましてね。新年明けると神様が神棚にお帰りになる。そのお迎えを済ませてから故郷に向かいます」というのだ。信心深いと言う意味ではなく、東京に出てから10年間を見守ってくれた神棚に畏敬の念を忘れない素直な性格が表れている。

正月、故郷に帰ってかつての同級生と再開するのが毎年の楽しみ。本名の田澤にちなんだニックネーム〝ター〟と呼ばれると一瞬であの頃に戻れる。「早く嫁いだコはもうお子さんが小学生。子育てはホントに大変だと尊敬しています。私はデビューが遅かったけど、ようやく所属事務所(松田聖子らが所属したサンミュージック)から演歌の後輩が出てきました。衣装の事とか相談してくれてカワイイです」とうれしそう。次の目標については「演歌の軸がブレないように。皆さんに認めてもらえて曲がヒットし私の代名詞になるように。そのためにはしっかり歌って歩きます」と派手な事は最後まで何一つ口にしなかった。

(畑山 博史)
