「赤毛のアン」の島から食の魅力発信、プリンスエドワード島フェア ロブスターロールなど試食会

 カナダ最小の州、美食の島〝フード・アイランド〟といわれる「プリンスエドワード島」。
 このプリンスエドワード島州政府が、今まで日本では知られていなかったブランド食材の数々を披露する食のイベント「発見!未知のフード・アイランド」を20日にカナダパビリオンで開催したので、参加してきた。

 プリンスエドワード島といえば、赤毛のアンの舞台として知られる、大西洋のセントローレンス湾に浮かぶ小さな島。
 その面積はカナダ全土の 0.1%で、愛媛県ほどの広さしかないにも関わらず、「フード・アイランド」と呼ばれ、農産物や畜産物、魚介類など多くの食材を生産・提供している。

 この小さな島がカナダ国内最大のジャガイモの産地で、カナダ全体の25~30%を生産しており、国が地域ならではの特産品と保証しているほど。また島周辺の海水温が低いことが、ロブスターやオイスターの身を引き締め、品質を高くし、北米のレストランから高い評価を得ている。酪農・畜産に関しては、牛にストレスの少ない牧草飼育が特徴で、高品質なミルクやチーズを生産、ビーフは赤身と旨味のバランスに優れている。

 こうした自然環境に恵まれているだけでなく、世代を超えた生産者のこだわりと情熱そして持続可能な生産に取り組む積極的な姿勢によって、カナダの「フード・アイランド」ブランドとして、国内外での評価を高めている。
 そんなプリンスエドワード島から持ち込んだ食材をふんだんに使用した料理が振舞われたので、紹介しよう。

ロブスター
 なんといってもプリンスエドワード島といえばロブスター。

 同島では150年以上に渡ってロブスター漁業が続けられていて、現在45の港で1200人以上の漁師がロブスター漁を行っている。
 年間で春と秋に2回だけロブスター漁が解禁され、漁獲量も細かく規制され、持続可能な環境の維持に力を入れている。海水温が低いため身が引き締まっているだけでなく、高タンパクで低脂肪、オメガ酸が豊富に含まれている。

 今回はロブスターロールとして試食が提供されたが、ブリオッシュに挟まれたロブスターの身は弾力性があり、噛むと甘みがにじみ出てくるほど。

マグロ
 マグロも海水温が低い海を泳いでいるので身が引き締まっていて、日本近海にいるようなクロマグロなどと比べると脂分が少なく食べやすいかもしれない。

オイスター
 冷たく浅い湾で育まれ、鮮度が高く、自然に持続可能な方法で生産されている。

 ロブスターと同じく、殻の中にしっかり引き締まった身が詰まっていて、生でも焼いてもおいしく食べられる。特徴的な塩味とほのかな甘味は、島特有の海洋環境を反映しているという。

牛肉
 意外に思ったのが牛肉。どうしてもプリンスエドワード島というとシーフードの印象が強かったが、今回提供されていた牛肉は小規模な家族経営の農場で、動物福祉に配慮した飼育と自然な給餌のもと生産されたもの。鉄分豊富な土壌で育つ牧草を食み、プリンスエドワード島産のジャガイモや厳選された高品質の飼育で仕上げられている。

 その結果、抗生物質を使用せずに育てられたトップクラスの牛肉として認定されている。

 試食してみた感想は「柔らかくて、おいしい」。USDAのトップクラスの牛肉以上かもしれない。甘みがあって肉の味もしっかりしていた。その上栄養価も高いとなるということなしだ。

 スーパーなどで見かけたらぜひ購入してみたいプリンスエドワード島の牛肉だ。

ジャガイモ
 何度か登場しているジャガイモもプリンスエドワード島の特産物の一つで、代表格でもある。
 カナダ最大のジャガイモ生産地で、持続可能な農業の先駆けでもあるという。鉄分が豊富な土壌で栽培するため、ビタミンC、カリウム、微量栄養素などが豊富に含まれている。食用、加工用、種イモ用として栽培されたジャガイモは、世界20カ国以上に輸出されている。

 今回の試食では、ジャガイモを加工し、ハッシュドポテトにして、その上にマリネされたサーモンを乗せ、トップにサワークリームを少し加える、という形で提供されていた。

 初めて見る食べ方だったが、ポテトの甘みとサーモンの塩味がバランスよく、また温度のあるポテトと冷えたサーモンのバランスも旨味を引き出すのに効果があったのではないか。


 カナダ人スタッフに確認してみたところ、「普段は出てくる料理ではないが、ブランチ(朝と昼兼用の食事)の際にはよく登場する料理だ」と教えてくれた。

 他にもスノークラブやムール貝のようなシーフード、ワイルドブルーベリーを使ったジュースやデザートのケーキなども用意されていて、ワインやシャンパンとともに、参加者の表情を和らげる効果を発揮していた。

 約2時間半にわたるプログラムでは、参加者同士の交流を深めるネットワーキングの時間が設けられたほか、カナダ外務省局長でカナダ館総代表のローリー・ピーターズ氏や、プリンス・エドワード島州のロブ・ランツ首相が登壇し、同島の魅力を紹介した。さらに、同島政府のラニア・パン・マカリア氏によるプレゼンテーション「カナダのフード・アイランド―プリンス・エドワード島」では、豊かな自然環境や食材、持続可能な農業・漁業の取り組みが披露された。

 その後、ロブスターの重さ当てクイズや、プリンスエドワード島出身のシェフ、アダム・ルー氏による料理のデモンストレーションがあり盛り上がった。

 ロブスターの重さ当てクイズを出題した、ロブスター漁師でマーケターでもあるシャーロット・キャンベル氏は、「プリンスエドワード島で獲れるロブスターがいかにおいしいか」をパワフルなトークで説明してくれた。
 今回もロブスターを空輸してきたそうで、「今後日本での販売ルートが開拓されたら、生きたままでも瞬間冷凍させた状態でもフレッシュなまま届けられる」と語っていた。

 またこの日は、会場内でのイベントが終了後、夕方6時頃からカナダパビリオンのステージエリアで、一般の来場者にもロブスターロールが振る舞われ、多くの人がステージエリアに吸い込まれて行った。

 後ろの方から、何をやっているのか覗き込んでいた若者が、「ロブスターロールが配布される」と聞いて嬉々としていたのが印象的だった。

 プリンスエドワード島とロブスターの色に合わせて、この夜はカナダパビリオンは赤い照明でライトアップされ、少し幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 プリンスエドワード島が「フード・アイランド」と呼ばれる所以をしっかり体感できた時間だった。

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