「ブスッとネコ」で学ぶ日本語 副詞がコミュ力を変える!

 表紙に大きくブスッとしたネコの顔どアップ本。今はやりの「ネコの写真集か?」と思ったら、題名は「にゃるほど!コミュ力UP語彙辞典」(KADOKAWA、1595円)。著者の本多正識(67)はNSC(吉本総合芸能学院)講師で漫才作家が本業。帯には「コミュニケーションの鍵を握るのは副詞」とあり、どうやら本物の辞典らしいが何やら不思議な体裁。

ドーンとネコのアップ顔が表紙の「にゃるほど!コミュ力UP語彙辞典」

 本多に問うと「いやぁ、僕がイヌやネコが大好きで。漫才のやり取りで状況を聞く人に伝えるために副詞は非常に重要。それを使いこなすために〝どうしたら分かりやすいかな?〟と考え、使用例をネコの表情や動きで表現しました」と実に真面目な解説。

 そもそも副詞とは、動詞や形容詞、別の副詞などを強調する修飾語。単に「早い」「おいしい」だけでなく標準語の「とても」や大阪弁の「ごっつい」「めっちゃ」を前に付けオーバーに表現すると状況が生き生きしてくる。

 制作作業はまず数千枚に及ぶネット上や愛好家のネコ写真を選ぶことからスタート。それに国立国語研究所・総合研究大学院の石黒圭教授が洗い出した様々な副詞を組み合わせて監修。最終的に120語に絞り辞書化、かわいいネコの写真に笑いながら副詞の使い方を理解。そしてその副詞の懇切丁寧な本来の意味も併記されているなかなかの優れもの。

「副詞120語選びは大変でした」と話す本多

 本多は「大喜利ネタは膨大に作ってきたので、お話しがあった時は楽勝、と。ところが同じ副詞を使わず言い替えるのは意外に難しい。改めて日本語の奥深さが分かりました」と感想。

 副詞コピーと一緒に見たら笑えるネコの表情と態度は秀逸。ネコ好きはコレだけでも買いたくなる。なるほど、生成AIではたどり着けないとんでもない展開の発想だ。

(畑山博史)