医師が起業、療養中でも旅を 安心サポート付きの旅行サービスに日本公庫が融資支援

ReTaby(リタビー)代表の坂野恵里氏

 「体調に不安のある人や闘病中の患者でも、気兼ねなく旅行を楽しめる」そんな社会の実現を目指して、大阪市中央区のスタートアップ企業「ReTaby(リタビー)」が、医療・介護のサポート体制を整えた旅行サービスを展開している。サービスの拡大を支援しようと、日本政策金融公庫(日本公庫)大阪南支店国民生活事業はこのほど、同社にソーシャルビジネス支援資金を実行した。

 同社は、高齢者や通院・在宅療養中の患者など、単独での外出に不安を抱える人々に向けて、医療や介護面での支援を組み込んだ旅行商品を提供している。

 代表取締役の坂野恵里氏は、現役の医師として、患者が「旅行に行きたいけれど、体調が心配」「準備や手配が煩雑」といった理由で外出をあきらめる姿を目にしてきた。そうした患者や家族の切実な声に応えるかたちで、同社を設立した。

 提供するサービスでは、医療スタッフの同行や介護タクシーの一括手配、緊急時に対応可能な医療機関の事前提示などを通じて、安心して出かけられる環境を整える。旅行内容も、地元ガイドと歩く日帰りツアーや、デパ地下をめぐる買い物体験、宿坊での宿泊や寺院巡り、そうめんの「麺延ばし」体験を組み合わせた1泊2日の体験型旅行など、多彩なプランを用意。医療的ケアが必要な人でも無理なく楽しめる内容とし、利用者のニーズに寄り添っている。

 坂野氏は、関西の女性起業家を支援するプロジェクト「LED関西」で今年3月、ファイナリストに選出されており、今後の活躍が期待される存在。今回の融資は、同社のサービス拡充に向けた設備資金および運転資金として活用される。

 日本公庫では、「社会的課題の解決に取り組む中小企業や小規模事業者への支援を通じて、地域経済の発展に貢献したい」としており、今後もスタートアップ企業への支援に力を入れる構えだ。