【大阪・南港】商船三井の体験型ミュージアム「ふねしる」誕生 海運の魅力を見て、触れて、学ぶ新拠点が大阪ATCにオープン

実際の訓練用シミュレーターを改造し、一般向けに導入。〝世界初〟の310度体験が可能。大型船や小型艇の操縦を5分単位で体験できる。大阪湾や明石海峡大橋の航路を昼や夜、天候などを選んで操船体験することができる。

 海と船の世界を身近に感じられる体験型ミュージアム「ふねしる」が7月19日、大阪市住之江区のアジア太平洋トレードセンター(ATC)内に開館する。開業に先立ち、18日にはオープニングセレモニーと記者発表会が行われ、関係者が施設の開設に込めた思いや、海運業への期待を語った。

左から、館長を務める上田和季氏、商船三井・常務執行役員の向井恒道氏、藤井秀明住之江区長、ATCの木村繁社長らがテープカット

 同施設は、創業141年を迎える海運大手・商船三井が手がける初の常設ミュージアムで、同社グループのフェリー「さんふらわあ」などを通じた航路の起点である大阪・南港の地に誕生した。館内には、世界初の310度LEDスクリーンの操船シミュレーターや横幅30㍍の大パノラマシアター、航海士や機関士、乗務員のパネル展示、普段見ることができない船のエンジンや機械の運用・保守のパネル操作体験など海運業の仕事を模擬体験できる展示が並ぶ。小中学生を主なターゲットとし、見て、触れて、遊んで学べる展示設計が特徴だ。

横幅30メートルの大パノラマシアター。フェリー「さんふらわあ」などが映し出される。手前は世界で活躍するさまざまな種類の船模型を展示
船の塗り絵や描いた船が壁面を動くインタラクティブアートが楽しめる

 常務執行役員の向井恒道氏は、「大阪は商船三井の創業地でもあります。同社グループの『さんふらわあ』は大阪と大分の別府、鹿児島の志布志を毎日結んでいます。地域の人により一層身近に感じてもらえるよう、ここから船や海の魅力を発信していきたい」と意気込みを述べた。

 館長を務める上田和季氏は、「島国日本の輸出入の99%を海運が担っています。海運業は、日頃の生活でなくてはならない仕事ですが、一般にはあまり知られていないのも事実。ここには海運の仕事や役割を子どもたちに知ってもらいたいという思いが詰まっています。将来、ここでの体験がきっかけとなって船乗りや海運業に進む若者が出てくれればうれしい」と語った。

 開館地であるATCの木村繁社長は、「当館のすぐ隣の岸壁は、かつてのコンテナ埠頭からフェリー埠頭に転換され、『さんふらわあ』の航路が2008年に大分・別府航路、2017年に鹿児島・志布志航路が移転してきた。それ以来、南港周辺の賑わいに大きく貢献している。この『ふねしる』がまた新たな人の流れを生み出す起点となるだろう」と期待を寄せた。

 また、大阪市住之江区の藤井秀明区長は、「住之江区はフェリー航路で各地とつながるまち。別府市や志布志市とも協定を結び、地域間の交流が生まれている。『ふねしる』は、そんなつながりの象徴的な場所になる」と述べた。

 ミュージアム前の吹き抜けスペース「ハーバーアトリウム」も今回の開館に合わせて整備され、テーブルやベンチが新設された。来場者は、目の前に停泊する「さんふらわあ」を眺めながら、旅への思いを巡らせることができる。

併設のカフェで、世界7カ国由来のフルーツを使ったオリジナルメニューや、青いソフトクリームなど海運を感じさせる食体験を提供

 また、大阪・関西万博の「未来の都市パビリオン」内の商船三井展示プレイスに展示中の風と水素で走る未来の船「ウインドハンター」模型を、万博終了後に移設予定だ。

 同館は、船を単なる〝乗り物〟ではなく、日常生活や産業に深く関わる存在として再認識してもらうことが目的。同社グループ社員の創意が形となった、学びと体験の新たな文化拠点として期待される。