大手企業も相次いで参入するライブコマース。テレビショッピングとは違い、「中はどうなっているの?」「質感は?」などスマートフォン越しに配信者と視聴者がコミュニケーションを取りながら商品の魅力を伝える双方向性が強みだ。商品販売の新しいスタイルに迫った。

バッグを手に持ち、カメラの向こうの視聴者に語りかける女性。「これ、すっごく軽いです!」「この色、実際に見るとこんな感じです! 画面越しでも伝わりますか?」
スマートフォン越しに軽快なトークが続き、コメント欄には「感触はどうですか?」「バッグの中を見せて」など、質問がリアルタイムで次々と流れる。配信者はそれに反応し、商品を手に取りながら分かりやすく説明する──これが今、注目されているライブコマースの現場だ。
ライブ配信とEC(オンライン販売)を融合させたライブコマースは、視聴者と販売者がリアルタイムでつながる新しいショッピングの形。すでに中国では当たり前のスタイルとして定着しており、2023年の市場規模は約98兆円にまで拡大。人気インフルエンサーが紹介する商品が、配信の最中に次々と売れていく。
このライブコマース。世界で市場規模が拡大中だ。国内でもコロナ禍の外出自粛をきっかけに、多くの企業が新たな販売チャネルとして導入。アパレルや化粧品業界を中心に普及が進み、ユニクロやニトリ、資生堂などの大手企業も相次いで参入している。
「だが、日本はまだ遅れている」と話すのはセレストの佐々木宏志社長。同社はライブコマースの可能性に早くから目をつけ、実用レベルで展開している大阪の企業だ。
利用者は主に30~50代の女性。日常的にネットで買い物をする人にとって「本当に自分に合うのか?」という不安は大きい。それを解決したのがライブコマースの双方向性だった。
例えば、化粧品やファッションアイテムであれば、肌へのなじみ方やサイズ感などを目で見て判断でき、動画を通じて確かめることができるのは大きな強みだ。
同社はライブコマースで商品やサービスを紹介・販売する出演者「ライブコマーサーのエージェント事務所で、ECサイトの構築から商品企画、動画制作、ライブ配信の運営までを一括して担う珍しい企業だ。独自の配信スタジオを持ち、ライブならではの〝リアルな反応〟を生かした購買体験を提供している。質問への即時対応、商品の使い方や質感を映像で伝えるなど、視聴者の不安を取り除きながら購買を後押しする仕組みを整えている。
佐々木社長は「ライブコマースは大手企業の参入や『信頼できる人から買いたい』というニーズの高まりを受け、今後さらに浸透していくと考えている。配信者=〝コマーサー〟という職業も確立し、企業にとって欠かせない存在になるだろう。当社も買い物体験をより豊かにするため、引き続き取り組んでいきたい」と話している。