新極真会の師範 阪本晋治の〝強育〟コラム
落ち着きがない、よく転ぶ、姿勢が悪い、集中力がない─。
これらの問題に対し、「最近の子どもは…」と一括(くく)りに片付けられがちですが、私はこの原因はシンプルに「足の裏にある」と確信しています。
実は、私が指導する放課後等デイサービスの児童にも、まっすぐ歩けない、姿勢が悪くフラフラしている、じっとしていられないA君がいました。
私はアゴに手をあて「原因は何だろうか」と考え込みながら、ふと足下に目をやりハッとします。
A君の足の甲が反り返り、指は地面から浮いていたのです。
「指が浮く」ということは、かかとに重心がかかっています。
かかと重心だとバランスを取るのにお尻を突き出さなくてはならず、必然的に猫背になります。体の軸がぶれて不安定な姿勢だから、当然まっすぐ立っていられません。フラフラするから体を真っ直ぐに保とうと、余計なところに力が入り、動き回ってしまうのです。
さらに、猫背なので、胸が広がらず呼吸も浅くなる。肺にたくさん酸素が届かないので集中力も低下します。それに瞬時の一歩目も出なくなる。それだけ足の裏は大事なのです。
立ち方三年、握り方三年、突き方三年
空手の鍛錬に「立ち方三年、握り方三年、突き方三年」があります。
〝立ち方〟はまさに足の裏。人間の体で唯一、地面と接するいわば土台です。木で例えるなら根であり、根がしっかり地面を捉えてこそ、太い幹が支えられ、たくさんの枝葉を伸ばし、多くの実を付けられます。
A君の原因を見抜いた私は、ゲーム感覚でできる足裏の鍛錬を開始。徐々にA君は真っ直ぐ歩けるようになり、姿勢も良くなり、じっとして人の話を聞けるまでに改善していきました。
土台がグラグラではさまざまな問題が噴出します。
半面、土台がしっかりすれば、あらゆる問題を解決できます。
扁平足(へんぺいそく)が増える理由
ところで最近、子どもの扁平足などの足裏の問題はなぜ、増えているのでしょう。
私は優秀すぎる靴に、原因があると見ています。
最近の靴は、優秀なインソールが足裏を最高の形にキープする補助をしてくれます。しかし本来、その形は自分の足指の力で作り出さなければなりません。
人体は使わなくなった機能が退化していきます。
足裏に限らず補助をし過ぎると、その能力は退化し、新たな別の問題を引き起こしてしまうものです。
姿勢が悪い、落ち着きがない、集中力がない…。一つ一つの枝葉の問題に対処しても真の解決にはつながらない。すべては根が大事なのです。
「文武両道」とは学芸と武道に秀でることですが、私は別物として捉えてはいけないと考えます。文武は本来、根は一つで「文武一道」なのです。
どんな状況になっても、自らの力で立ち上がる。
そのためにも「文武一道」の教育こそ必要であると私は信じています。
>>【文武一道②】足の裏の次に大事な目。目を鍛えれば、場の空気さえ読める
■阪本晋治(さかもとしんじ)プロフィル/1975年大阪市生まれ。空手選手として全日本大会準優勝、ワールドカップ(ハンガリー)ベスト8、日本代表として全世界選手権大会に出場する一方、NPO法人全世界空手道連盟新極真会の師範として7つの道場を統括し、門下生は約600人。空手の普及だけでなく、大阪観光大学講師や門真市との事業連携など社会、地域活性化で幅広く活動している。