今年3月、和歌山県串本町にあるロケット射場「スペースポート紀伊」から小型ロケット「カイロス」初号機が打ち上げられた。成功すれば民間単独としては国内初で注目されたが、直後に飛行を中断し、機体は爆発。ミッションは失敗に終わった。あれから約7カ月。同射場を運営する日本の宇宙ベンチャー「スペースワン」は12月14日の午前11時~11時20分頃に2号機の打ち上げを発表。注目が集まる串本町の今を取材した。
射場から約2㌔に見学場も
本州最南端に位置する串本町は今〝ロケットのまち〟という新しい顔を持ち始めている。ロケットの打ち上げは鹿児島県の種子島が有名だが、「これからは和歌山」と期待されている。
「打ち上げを見に行くなら射場から2㌔ほど離れた場所に設置される見学場の『田原海水浴場』と『旧浦神小学校』に限る」。こう話すのは串本町役場のロケット推進室の宮本宏保さんと東田一真さんだ。他の場所は交通規制などで、期待通りに見られない可能性があるという。
カイロスは全長18㍍の小型ロケットで、迫力ある打ち上げシーンを見るなら見学場に行くのが正解。見学場の入場チケットは10月21日から「カイロスロケット2号機打上げ応援サイト」で販売を開始。完売した場合も、後日に改めてキャンセル分を再販売するそうだ。「応援サイトを小まめにチェックしてほしい」と両氏は語る。
初号機打ち上げの際、宿泊施設「大江戸温泉物語 南紀串本」では、屋上の展望テラスを開放し話題になった。宿泊者優先となるが「今後も続けていきたい」と支配人の藤本裕貴さんは話したうえで、「いつか露天風呂から打ち上げを見られるプランなども考えたい」と夢も語ってくれた。
同ホテルは観光名所の橋杭岩に近く視界も良好。実現すれば世界から注目されそうだ。
見た目びっくり ロケットグルメ
串本町で最も驚くのは地元のグルメだ。中でもレストラン サンドリアの「串シーフードロケットフライカレー」の存在感は圧倒的。カレーの上にロケットをイメージした天然の有頭えびが直立し、その下にはトコブシ(冬はカキフライ)、生マグロ、ホタテ、スルメイカのフライが続く。このシーフードフライは噴射の白煙を演出し、色鮮やかなパプリカはロケットの迫力を感じさせる。
料理長の東丈二さんは「串本の『串』、飛ぶの『フライ』をかけた」と笑顔で話す。〝ロケットのまち〟を盛り上げる気持ちが伝わる一品だ。
また、「うすかわ饅頭 (まんじゅう)儀平」の「ロケット饅頭」も見逃せない。チョコレート生地の焼き饅頭の中には黄身あん、そして全体をホワイトチョコで覆ったロケット形の洋風饅頭だ。アイス棒は火を噴きながら飛ぶ姿をイメージしている。
製造部長の丸山正雄さんは「ロケットは偉大な挑戦。そこに影響を受け今までにない饅頭に挑戦した」と真剣だ。創業は1893(明治26)年で〝うすかわ饅頭〟と言えば紀州に儀平と言われる老舗。店前には橋杭岩が並んでいる。
打ち上がるロケットをイメージし饅頭を片手に写真を撮るのは流行りそうだ。