STEAM教育が広がる背景
「STEAM教育」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた教育概念だ。
同概念はアメリカがスタート。2006年のブッシュ政権下で「STEM教育強化 10の指針」が発表されて以降、優先課題として位置づけられてきた。そこから全世界的に広がり、日本でも18年に文部科学省によってSTEM教育が推進されている。その背景には、今後のIT社会を見据えて内閣府が提唱した「Society5・0※」と、そのための「理系人材の不足」予測がベースにある。
※Society 5.0とは
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を指す。これまで人類が経験してきた4つの社会、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会といわれている。
「理系脳」だけではAIにかなわない
現代は「STEM教育」からさらに「Arts※」を加えた「STEAM教育」が推進されている。Artsの範疇(はんちゅう)は広く「表現」全般を指す。理数教育により専門知識や技術力を極めるだけでなく、それらを適切に表現し他者とコミュニケーションを取る力が必要だと言われ始めた。それは、AIや精密機械など、技術面では人間が到達できないモノが登場。また技術の移り変わりも早い現代だからこそ、複合的に課題を論理的に組み立て解決する力が人間には求められている。そのために、主体的で教科横断的に学ぶ力が重要で、その学びには創造性を育む「リベラルアーツ」が必須だ。
※「Arts」が指す内容とは
人文科学・社会科学全般で、芸術学、文学、音楽学、哲学、人類学、言語学、宗教学、心理学、歴史学、経済学、社会学、法学、政治学など幅広い。
まずは「主体性」
課題解決には主体性が欠かせない。子どもが主体的に学ぶには、当然学ぶことそのものを「楽しい」と思う環境づくりが必要だ。また、幅広いジャンルを主体的に学ぶには、あらゆる教科への苦手意識を極力減らすのも重要だろう。「あそび」を通じて各教科の楽しさに触れる経験を積ませることがまず大切だ。
ここで学べる! STEAM教育
公立学校の現場でも取り組まれつつあるが、人材不足などの課題も多い。一方、質の高いSTEAM教育を提供しようと民間の教育・習い事機関が旗を振っている。
STEAM教育の根幹は「課題を探求する力」「主体的に学ぶ力」で、それを育むために一つのテーマ・プロジェクトに向かって楽しみながら取り組む、という内容を導入している。実際のカリキュラムや教材は各教室でオリジナルに作られていたり、海外から取り入れているところも。
例えばSTEAM教育に力を入れている民間学童では、「預かるだけ」でなく、「預かる時間をよりよい学びにしよう」と、一つの分野にこだわらず学びの場を提供し、あらゆる分野への興味のベースを作る。「実験」「工作」「プレゼン」「語学」などから、定期的に取り組むテーマを変えて、子ども主体でプログラムを遂行する取り組みが見られる。
また、最近人気を伸ばしているプログラミング教室・科学教室では、専門的な環境・講師に囲まれて一定期間カリキュラムを学ぶことで、プログラミングスキルや実験スキルを育てられるのが強みだ。