冬の肌寒さが増し、エアコン暖房に頼る季節。しかし、最近はエアコンに不快感を示す人も多い。温かい空気が滞留する上半身は顔がほてるほど熱くなるが、足下は冷たい空気で底冷えしたまま。加えて温風を浴び、肌やのども乾燥する。こうした従来型エアコンの課題を解決する画期的な冷暖房「F─CON(エフコン)」に迫る。
無風、無音で朝までぐっすり
「F─CON」は福岡県博多区のFUTAEDAが開発。温冷風を用いて、室内の空気の温度を変化させる従来のエアコンとは仕組みが全く異なるシステムで、一言で説明するなら「風の出ない冷暖房」といえる。上の空気は温かいが下は寒いといった温度差もなく、室内すべての温度を一定に保てるのが特徴だ。
その仕組みは、自然環境の温度変化と同じ「ふく射」や「放射」といった物理法則の応用だ。まず、熱というものは温度の高い方から低い方に移動する性質がある。例えば凍える冬の日、太陽光にあたるとポカポカとした暖かさを感じるのは、温度の高い太陽の熱が、温度の低い人体に移動しているからだ。
一方で、真夏の猛暑日に洞窟に入ると涼しく感じるのは、体の熱が温度の低い洞窟の岩壁に移動するためだ。
F─CONは、この「ふく射」の原理を活用。表面のパネルに冷温水を流してパネル全体の温度を調整。冬なら温かいパネルの熱を壁や天井、床に吸収させて部屋全体を温め、夏は逆にパネルを冷やして壁や天井、床の熱を奪い、涼しく感じさせる。
加えて「ふく射」は、物体を介さず、赤外線による自然の熱移動の原理で、パネルのない隣りの部屋の壁や天井にも熱移動が発生する。
新大阪にF─CONの体感ショールームを設け、販売パートナーも務めるドクターリセラ環境事業部の渡辺光男マネージャーによると「住宅に設置する場合、広さや条件、設置場にもよるが、1台で2階部分すべてを大体カバーできるケースが多い」という。
「温度ムラが少ない快適さもあるが、無音、無風でぐっすり眠れることに感動して導入する人も多い」と話す。著名人では、元千葉ロッテマリーンズの井口資仁監督もその一人だ。プロ野球時代の遠征で、F─CONを導入した博多のホテルに泊まり「ぐっすり深い眠りにつけて、次の日の朝の疲れの取れ方がまったく違うように感じる」と自宅にも導入した。
F─CONは現在、全国1700カ所で導入が進んでおり、住宅のほか、病院や学校、競技施設、ホテル、高速道路PAのトイレなどでも採用。温風でほこりが舞うのを嫌う研究所からの引き合いも増えているという。
エアコンと比べた場合のメンテナンス頻度や耐久性についてはどうだろうか。「温水や冷水を作り出す室外機は10年程度だが、室内のパネルに限れば、材質はアルミとステンレス製なので、半永久的に使える」と説明したうえで、「エアコンのように定期的にクリーニングする必要もない」と渡辺さん。
導入費用は室外機も含めて1台100万円程度から。新大阪にあるドクターリセラ本社1階のショールームで体感できる。場所は大阪市東淀川区東中島1─7─17。問い合わせは電話06(6990)4700、同社環境事業部、渡辺マネージャー。