【関西の教育最前線(4)】情報Ⅰ、歴史総合、公共… どう変わる? 25年度の大学入試

 現高1生から新しい学習指導要領に基づいた授業が行われている。ニュースで話題になった「情報Ⅰ」や、日本史A・世界史Aの内容を含む「歴史総合」、主権者教育や企業会計も含む「公共」といった新しい必修教科や科目。現代国語は「論理国語」「文学国語」に分けられて選択履修になるなど、大きな変更だ。現高1生の受験年となる25年度入試はどう変わるのかを発表の範囲でまとめてみた。

藤山正彦(開成教育グループ)入試情報室長
藤山正彦(開成教育グループ)入試情報室長

共通テストについて

 大学入試センターが発表した共通テストの試作問題を見ると…

【国語】これまで現代文2問と古文、漢文の4問で構成されていたが、現代文に実用文が加わり計5問になりそうだ。現代文の配点割合も50%から55%になる。

【地歴】歴史総合・地理総合が出題範囲に。世界史を選択しても大問1は日本史選択者と同じ「歴史総合」が出題されている。試作問題ではいずれも配点の25%を占める。

【公民】必修になった「公共」は政治・経済、倫理を選択しても出題される。試作問題では配点が25%になっている。

【地歴+公民】これまでになかったパターンの「歴史総合」+「地理総合」+「公共」という必修3科目を合わせた選択も可能に。

【数学】文系の生徒の範囲は数ⅠA・数ⅡBまでだったが、ベクトル、平面上の曲線と複素数平面、数学的な表現の工夫の単元を含む「数学C」が新設された。このため、共通テストも「数学I」、「数学I・A」「数学I」+「数学Ⅱ・B・C」、「数学I・A」+「数学Ⅱ・B・C」という4通りの選択ができる。試作問題の「数学Ⅱ・B・C」は各科目から2問ずつの出題だが、数学Bと数学Cの計4問から3問を選ぶ形式で作られていた。

【情報】試作問題は全問必答の大問4問構成。

国公立大の対応

 共通テストのどの教科・科目を採用するか、その配点も含め、各国公立大の判断だ。「情報Ⅰ」への対応も一律ではない。

 配点は未発表だが、東京大・大阪大・神戸大・筑波大は大阪大歯学部の学校推薦型を除いて文理いずれも「情報Ⅰ」を必須科目にしている。旭川医科大のように第1段階選抜に情報Ⅰを1000点満点中100点(10%)、第2段階選抜では1550点中50点(約3%)と発表する大学もある。一方、北海道大や香川大、徳島大は受験そのものは必須だが配点には加えないようだ。ただ、北海道大は同一得点の場合に「情報Ⅰ」の得点を参照、徳島大は26年までは点数化しない、など対応が分かれている。

 2次試験の出題範囲にも影響がある。2次試験で国語が課される大阪大の法・文・人間科学・外国語の学部では、必修科目の「現代の国語」と「言語文化」を試験範囲にしており、選択履修の「論理国語」「文学国語」や「国語表現」は範囲外。

私大の対応

 早稲田は昨年末、全体的な方針を発表した。ポイントをまとめると…

●基本的に全学部が新教育課程に対応した出題範囲で試験を実施(ただし「歴史総合」は出題範囲から除外)
●共通テストの「情報Ⅰ」を利用する学部、方式を設ける
●社会科学部と人間科学部では一般選抜を共通テスト+学部独自試験方式に変更
●商学部で一般選抜の英語4技能テスト利用型の募集を停止。一方で文化構想学部や文学部では、4技能テスト利用方式の募集人数を増加
●国語の出題範囲は「国語表現」以外の5科目

 関西大も1月18日に方針を公表したが、大きな変更とはなっていない。

 このように新指導要領の私大入試への影響は、共通テストや国公立大よりも少ない。そうなると新指導要領初年度の「共通テスト離れ」が進み、変更が限定的で対策が比較的容易な都市部の私立大、特に難関大に受験生が集まりそうだ。

 一方で国公立は募集単位の小さい地方大の競争率低下が考えられる。各大学の発表に注意しながら対策すれば、国公立大への進学チャンスが広がりそうだ。