大阪の富裕層はなぜ、札幌のタワマンを買うのか?【第1回】 世界の富裕層が北の大地に熱視線

 空前のタワーマンションブームで、大阪市内では物件価格が上昇し続けている。購入者の中心は富裕層や海外投資家だが、その関西の富裕層が今、熱視線を注いでいるエリアが北海道の札幌だ。

札幌駅北側で再開発組合の事業で建設されているタワーマンション「ONE札幌ステーションタワー」(札幌市北区北8西1)

道外の購入者が40%以上 関西の契約者も多い

 大阪都心部の北区や中央区、福島区、西区などのタワマンは、バブル期を彷彿とさせる上昇が続いている。「あまりの高騰ぶりに、会社員の購入は確実に減っています」と大阪のタワマン市況に詳しいES&Companyの芝崎健一COO(最高執行責任者)はこう話す。
 しかし、タワマンの売れ行きに、決して陰りが出ているわけではない。その理由について「富裕層の購入は相変わらず堅調です。加えて円安を背景に、コロナ禍で止まっていた海外投資家による購入の巻き返しが始まっています。会社員が買えなくなった分、その穴を埋めている」と購入者の二極化を指摘する。
 その二極化の一極を担う不動産購入に旺盛な富裕層らが最近、新たに注目しているエリアがある。それは北の大地、北海道だ。

 JR札幌駅北側で、再開発組合の事業で建設中のタワーマンション「ONE札幌ステーションタワー」(札幌市北区北8西1)もその一つだ。
 「ここ最近は特に大阪を中心に、関西からの問い合わせが本当に多いんですよ」と話すのは売り主の一つである大和ハウス工業(株)北海道支社の営業担当者。
 この物件、入居は2024年で、完成後は道内最高層(48階建て)になる予定だが、札幌市民の多くに「こんな物件、二度と出ないだろう」と評判になっている。
 現在、この物件の契約者の内訳を見ると、道外が実に4割以上。このうち約3割超は大阪を中心とする関西の富裕層が購入している。

冬のJR札幌駅

世界の超富裕層が集まるリゾート地「ニセコ」

 大阪の富裕層はなぜ、北海道に熱い視線を注ぐのか。その理由を明らかにする象徴的な存在は、なんと言っても「ニセコ」の存在が大きい。
 ニセコと言えば、握っても雪玉にならないフワフワの〝パウダースノー〟が今や世界的に有名になった。各国のスキーヤーはこの雪質を求めて、ニセコに続々と集まるようになった。そのうち、この訪日客の需要を満たすため、パーク・ハイアットリッツカールトンといった五つ星ホテルが続々と開業。またたく間にリゾート地化が進んだ。外国人の移住先としても人気が高まり、海外の超富裕層が高級別荘を購入。日本の著名人らも所有している。
 道内の不動産業者によると、「(ニセコでは)坪1000万円を超える物件も珍しくない。これは東京よりも高い」という。

ニセコヒラフスキー場と俱知安の夜の街並み

1年で3割アップ 想像絶する札幌のタワマンバブル

 その余波はニセコから約90km離れた札幌市にも及んでいる。〝億ション〟の好調な販売が相場を押し上げ、新築マンションの価格が高騰中だ。
 実際の値上がり具合はどうか。同市の新築マンション平均発売価格(不動産経済研究所調べ)によると、2020年の3918万円が、21年には5026万円と、前年比28.3%急騰。我々が肌で感じる近畿圏の〝タワマンバブル〟でさえ、上昇率9.1%だから、札幌の急騰ぶりは想像を絶する。

関西よりも割安

 富裕層にとっての関心事は「持てる資産をどこで運用するのが、よりベターな選択肢か」だろう。その視点からすると、株や債権などの金融商品は、インフレ封じに欧米の中央銀行が利上げに動いて以降、不安定な値動きが続いている。
 一方、日本の不動産はアベノミクス以降の金融緩和を追い風に、依然として値上がりが続く。その筆頭は首都圏や近畿圏のタワマンだが、ここへ来て北海道エリアが都心部を上回る上昇率を示すようになった。そう考えると、高額な都心部より割安で、さらに都心部より投資リターンの大きい北海道に、マネーが集まるのにも合点がいく。
 ただ、心配なのは今春、日銀の黒田東彦総裁の任期満了で、金融政策が180度転換される可能性があることだ。アベノミクス以降、金融緩和を続けた日本だが、利上げに舵を切れば、住宅ローンで購入できる上限がこれまでより低くなるため、不動産価格の下落を心配する声がある。
 ただ、タワマンに限れば、購入者がすでに富裕層や海外勢の投資対象にシフトしている現状からすると、資産価値の目減りは限定的という見方もできる。
 加えて、建築資材の高騰で、新築価格が下がりにくい状況も相場を下支えしている。すでにリーマン・ショック後は資金力の乏しいタワマン業者は淘汰され、今は大手ばかり。資金繰りに余裕があり、無理に値下げする必要もない。

8年後には新幹線も開業 

 さらに札幌の場合は、不動産価格に上昇圧力を加える要素がある。2031年に札幌まで延伸する北海道新幹線だ。
 新青森から札幌までを結ぶ約361㌔の路線計画で、「新青森─新函館北斗」(約149㌔)はすでに16年に開業している。残りの「新函館北斗─札幌」(約212㌔)は、当初計画より5年前倒され、31年春の開業を目指している。
 新幹線開通後の利便性について、JR北海道の発表では、時速320㌔で東京─札幌間を4時間半で結ぶ。札幌から道内各地への所要時間は、ニセコが30分、新函館北斗が1時間、新青森が1時間半のイメージだ。今はニセコまで自動車や電車で2〜3時間かかるため、開業の効果は大きい。

観光拠点「札幌」の価値を高める北海道新幹線

グルメも魅力の北海道

 加えて、新幹線は人の動きや物流を大きく変える。これまで五つ星クラスの外資系高級ホテルがなかった札幌に、富裕層の長期滞在もターゲットに入れた最高級ホテルの建設計画が相次ぎ、ハイアットマリオットのが着々と工事を進めている。


 関西から札幌のタワマンを契約した会社経営のMさんは「本宅は大阪で、札幌はセカンドハウス利用。北海道は広いから、観光するにも拠点がある方が便利。食べ物もおいしいから家族も喜ぶ。加えて、新幹線が開業すれば、札幌を拠点にニセコや函館、小樽にも日帰りで行けるようになるのも魅力」と話していた。

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 今、世界から注目されている北の大地、北海道。鼻の効く大阪の富裕層はすでに、当地に熱視線を注いでいるようだ。

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