【外から見たニッポン】テレビビジネスって面白い

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 皆さんはテレビ放送を見ますか? 見ているとき何か考えていますか?テレビ放送に関係するビジネスと言えば視聴率と広告収入、そこから派生する番組製作費くらいしか思い浮かばないのではないでしょうか?実際日本ではそれがほとんどです。

 海外はと言うと、テレビ放送は巨大なメディアコングロマリットのビジネスの1つでしかなく、地上波は日本とは比べ物にならない位小さな存在です。例えばディズニーは、地上波のABC、有料放送のESPNやディズニー・チャンネル、製作会社のピクサー・アニメーションやルーカスフィルム、20世紀スタジオ、マーベル、配信プラットフォームのHuluやDisney+などを傘下に持っており、他にもテーマパークも所有しています。

 日本では地上波テレビで放送する事が最優先でそこがお金もうけのキモになっていますが、ディズニーなどでは、これら全ての組み合わせで最大限の利益を産み出すことを考えています。

 アメリカでテレビをみていて衝撃を受けた番組があります。「アメリカンアイドル」という番組で2002年にアメリカで大ヒットしてその後世界中で◯◯アイドルとして広がっていきました。この番組は歌のオーディション番組で、CS放送で放送されていたので知っている人もいるでしょう。一般人のオーディションから始まり、毎週視聴者投票で数名の候補者が落とされていき最後には一騎打ちで優勝者を決めると言うもの。これだけだとありふれた番組ですが、その裏にはビッグビジネスが仕掛けられています。

 まず、この番組はフォーマットライセンスという形で番組の仕様を購入してきて、製作会社がそれに基づいて製作しています。そのライセンス料は1話当たり約1億円。16週放送されたのでフォーマット使用料は16億円。製作費は1話当たり数千万円程度で、これはドラマなどと比べると格安の金額。ここまでで1話当たりにかかる費用は1・5億円程度。その上に放送局であったFoxの費用が上乗せされます。

 これに対して収入はと言うと、広告はコカコーラ、フォード、そしてAT&Tという大手企業が各社数十億円を払っていました。毎週放送の最後に推しの候補者への投票がAT&Tの携帯電話からしか出来なかったり、トップ10に残った候補者を登場させた新車のCMが番組内で放送されたりと、様々な仕掛けがありました。毎週見続けると応援している推しに対してかなり感情移入しているファンが醸成されています。決勝戦の投票は3000万票以上。優勝者は1週間後にはアルバムをリリースします。投票者の1割が購入してもアルバムはミリオンセラー。5月に最終回が放送されたあとトップ10のメンバーで夏休み中、全米を巡るツアーコンサートを開催し、行く先々で満員御礼。出場者はまだ半分素人なので出演料は格安。現在までにアイドル出身の歌手たちはアメリカの音楽シーンを席巻しています。

 この番組の派生で誕生したのが最近テレビでも取り上げられたブリテンズ・ゴット・タレントなどのゴット・タレントシリーズで、こちらのフォーマットも世界中へライセンスされて莫大(ばくだい)な利益を産み出しています。と言うように、たった1つの番組からこれだけお金を儲けるカラクリを仕込んでいます。このような仕組みを積み上げた頂点にいるのがディズニーなどのメディアコングロマリットです。テレビ番組の見方、変わりませんか?