2026年3大国支配の時代へ 「日本&大阪」舵取り力は?

 年の瀬が迫り、まもなく新年を迎える。〝戦後80年、昭和100年〟と区切り感が強かった2025年は日本と大阪を取り巻く環境が大きく変わった。
 国内政治は〝穏健派で反アベノミクス〟の石破政権から〝右派で親アベノミクス〟の高市政権へ。大阪は万博の大成功にわき、ふと気づけば府知事をはじめ、大阪市など府内首長の半数以上を占める「維新の会」が初の連立政権入り。世界は王のごとくふるまう〝3人の独裁者〟が分割支配を画策。中国の習近平国家主席はアジアを、ロシアのプーチン大統領は欧州を、そして米国のトランプ大統領は南北アメリカを手を携えて押さえ込む勢いだ。嵐の中で高市早苗総理と吉村洋文府知事の命運は?

連立政権合意文書に署名後、記念撮影に臨む自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会の吉村洋文代表=2025年10月20日、国会内(ロイター/アフロ)

トランプ・習・プーチンの野望

高市政権と大阪維新、2026年の正念場

モスクワの土産物店で販売されているマトリョーシカに描かれた(左から)ロシアのプーチン大統領、米国のトランプ大統領、中国の習近平国家主席=2025年8月12日(AP/アフロ)

危険な独裁者たち

 トランプが「中国と厳しく対決している」と見るのは間違いだ。彼は商売人だから「いかに有利な条件で交渉を妥結させるか」にしか興味はない。トランプは米国一強の代名詞だった〝世界の警察〟には興味がなく、欧州やアジアのために多額の出費を強いられる軍事費を「無駄だ」と考えている。中南米のベネズエラに〝麻薬運搬阻止〟を口実に軍を派遣して政権打倒を目指しているのや、運河の権利を再びパナマから取り戻そうとするのは、すべて「南北アメリカは全部自分の利権」と考えているからだ。
 来秋の米国上下院中間選挙で共和党が敗れると、彼は〝死に体〟になる。このため、来年はなりふり構わぬ〝国内バラマキ施策〟へ打って出ることが予想され、日本への影響は避けられない。中国では再来年(2027年)、習近平国家主席の任期が切れる。「2期10年まで」だったルールを書き換えてまで、彼が3期目に就いた大義名分は台湾支配の実現だ。第二次大戦後に再発した「国共内戦」で、毛沢東の中国共産党軍は蒋介石の国民党軍を台湾に追い詰めた。直後の1950年には朝鮮戦争が勃発、米欧VS 中ソの東西対立が先鋭化し、以後は延々と現状へとつながっている。大陸を制した中国共産党は台湾を制圧しない限り真に「国共内戦に勝利した」とは言えない認識がある。高市早苗総理はこの一番痛いところを突いた訳で、今後中国は「渡航自粛」「尖閣緊張」「パンダ引き上げ」と硬軟あらゆる手を使って日本政府を揺さぶってくる。ここで日本側が冷静になる必要があるのは、中国共産党の思惑と多くの中国人の認識が異なる点。一党独裁国家・中国は表現の自由が無いから国の命令は絶対。一般中国人はけっして日本を嫌いではないが、何も口出しできない。習近平に「日中友好」や「民間交流」のソフト対応は通じない。日本は「米国に対しこういう影響力を行使できる」と示し、彼と直接交渉するしかない。
 ロシアは民主化した体裁を取っているが実際は野党の存在を許さないプーチン独裁国家。彼を支えているロシア国民の夢は〝大ソビエト連邦の復活〟で、現在のウクライナなどを連邦内に従え中心に位置していたのがロシア。それらの国々が独立し、同盟国だった東欧諸国も民主化しロシアは丸裸に。ロシアはナポレオンやヒトラーの侵攻が身にしみて、伝統的に欧州への警戒感が強い。外堀が東欧諸国、内堀が旧ソ連内の各国。だからウクライナの民主化は絶対認めない。国民はかつての〝強いソ連〟復活を願うプーチンへの支持が続くから、交渉さえ長引かせればトランプが欧州から手を引くことを知っている。

安倍コピーの高市政策

 高市総理が強硬右派思想家とは、いまや国内外で周知の事実。前任の石破茂前総理が就任前は威勢が良かったのに総理になると財務省の言いなりになる姿を見ているから、高市の物価高対策減税や年収の壁撤廃などを国民は好感し高い支持率を維持。彼女の経済施策サナエノミクスはアベノミクスの焼き直しだ。積極財政と日銀金融緩和でプライマリーバランス(債務関係を除いた収支)を崩す、までは同じ。3つ目でアベノミクスは「民間投資を呼び込む成長戦略」を挙げ、サナエノミクスでは「ワイズ・ペンディング(賢い投資)」つまり将来の成長分野に重点予算配分を変えただけ。アベノミクスは長期デフレ時の施策だったから低金利円安誘導しても物価は安定していたが、サナエノミクスは円安による輸入品インフレ下だからさらなるインフレ円安を誘発しかねない危険性をはらむ。
 安倍晋三元総理は、まだ就任直後で不慣れなトランプをうまく手玉に取る一方で中国とは徹底的に距離を置き、プーチンに接近。どちらか一方に偏らないよう工夫した。高市はトランプの横ではしゃぎ習近平にはけんかを売ったが、プーチンにはいまだ接触無し。「もしトランプが頭越しで習近平と握手したら?」と考えると、韓国、台湾、インドやASEAN(東南アジア諸国連合)、豪州などとの連携を急ぐ必要がある。

政権入り「維新」メリットは?

 同じ〝一本足打法〟で維新のトップ、吉村洋文府知事の場合も切羽詰まっている。地方自治体首長が連立政権を組む公党を指揮しているのは、裏返せば「吉村の代わりは維新内に誰も居ない」ことになるからだ。
 大阪維新は、橋下徹元府知事を担いだ松井一郎前大阪市長らが作った。ここへ吉村知事が加わりトロイカ体制が出来た。橋下、松井は2度の都構想住民投票に敗れ政界引退。吉村を支える取り巻きは居ても代わってトップに立てる人材が国政、地方行政ともいまだ見当たらない。
 自維連立政権が誕生時、盛んに「衆院定数削減」が注目されたが私は「定数削減重視の姿勢は、大阪都構想焼き直しの〝副首都構想〟実現への隠れみの。削減などできるはずがない」と断言、その通りになった。国・地方の議員で不祥事や離党者が相次ぐ維新にとって、政権入りメリットは 〝一丁目一番地〟の都構想実現で党内外を一気に引き締める意味を持つ。「定数是正」「政治とカネ」は二の次だ。2度も都構想を否決した大阪市民には気の毒だが諦めてもらうしかない。
 大阪の吉村王国はまだまだ続く。夢洲開発の中心IR(カジノを含む統合型リゾート)建設は順調に進み、刺激を受け市臨海部の咲洲、舞洲にも急速に注目が集まっている。維新にとっては新たな利権のためにも夢洲開発へJR桜島線と京阪中之島線の延伸へ国庫補助を受けねばならず、そのために政権に留まるのが予算獲得への必須条件だ。
 民間開発は阪急阪神HDが阪急大阪梅田駅周辺の大規模再開発に新年から着手。うめきた第2期事業「グラングリーン大阪」の最終完成も27年春ともうすぐだ。万博を契機に「ミナミの南」と呼ばれる新今宮駅界隈もなんばターミナルの拡大としてホテルや複合ビルが増殖してきた。
 公的開発では城東地区(森之宮・OBP・京橋エリア)が大阪公立大新キャンパス移転を終え、大阪メトロ中央線・森之宮新駅(仮称)の28年春開業に向け周辺整備が進む。大阪市は長らく「キタ・ミナミ」の二極軸だったが共に拡大を遂げ、都市活性化への念願の東・西のターミナル誕生も見えてきた。
 多数が大阪を訪れていた中国・香港からの観光客激減が一抹の不安材料ではあるが、維新が政権与党に収まった大阪の新年開発は見通し明るい。

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