治療用チェアが2台しかない歯科 子どもが「歯医者好き」になる職業体験、実施

 「子どもが変われば、世界が変わる!」をスローガンに掲げる「天六としもり歯科」は昨年5月、大阪市北区に開院した歯科医院。予防歯科に力を入れ、子どもたちに「歯医者さんの職業体験」も行っているという。そんな同歯科を子育て真っ最中のママ記者が取材した。 (松尾梨紗)

子どもたちの職業体験の様子

子どもに特化

 天六としもり歯科は、母体である旭区の歯科医院での小児歯科・小児矯正の経験を生かし、「子どもに特化したクリニック」として開業。歯を削る虫歯治療も行うが、予防歯科と育成に力を入れている。特に予防に不可欠な各種検査が充実。唾液検査で虫歯になりやすいかどうかを数値化したり、不正咬合の原因となる「お口ポカン」の子どもの口唇を閉じる力を測定する器材もそろっている。

 特に印象に残ったのは、「立ち姿」や「顔貌」の写真を撮って定期的に記録し、治療やトレーニングの成果をビジュアル的に確認できることだ。また、口腔内スキャン(アイテロ)も常備されているので歯並びについても定期的にスキャンし、歯列の発育や治療効果を視覚的にチェックすることができる。 

 自身の目で確認することで、治療を継続するモチベーションが継続し、治療期間も短くなる相乗効果も生まれてくる。親としても子どもの歯が改善していく過程をビジュアル的な資料として提示してもらえることは大きな安心につながると評判だ。

まるでキッザニア

 休診日には職業体験を開催しており、そこでは子どもたちに歯科医師が日頃行っている治療を同じ器具や器械を使って行う。治療する側の立場を経験することで、自分の歯並びや虫歯などへ意識が向くようになり、自己管理ができるようになるという。いつも歯医者さんに行くと泣いていた子どもも笑顔で来れるようになることもしばしば。筆者も子どもの頃は走って逃げ回っていたので、もっと早く出会いたかったと心から思った。

白衣を着用し、子どもたちが並ぶ姿はまるでキッザニア

お口のトレーニング

 歯列不正や発音障害、嚥(えん)下障害などの原因になるさまざまな習癖(悪習癖)については、現在、保険治療で「不全トレーニング」が受けられる。同歯科では、毎月トレーニングの課題が決まっていて、受診する子供たちがそのプログラムに沿って月一回、専門のスタッフ(チーフトレーナー増田亜美さん)とトレーニングを受けている。ほとんどの子どもたちが市からの助成を受けているので安価でトレーニングを継続できる体制が整っている。いつも口を開いていたり、歯並びに不安のある子どもはぜひトレーニングを受けてみてほしい。

 今回の取材で、歯を削って虫歯を治すだけが治療ではないことを実感した。広いスペースにも関わらず、治療用のチェアがたった2台しか無かった理由にも納得だ。 

 取材に応じてくれた主任歯科医師の岩田有加先生は、「予防歯科と育成に力を入れているため、当院ではいかにチェアを無くすかということに力を注いでいます」と胸を張る。虫歯や歯列不正のない健康な子どもが育つよう頑張っていただきたい。

歯並びをきれいにするお口のトレーニング
予防歯科に力を入れる天六としもり歯科の岩田有加先生

■天六としもり歯科/大阪市北区天神橋5─4─15/電話06(6755)4180