「経営・管理」ビザ厳格化 外国人起業に〝3000万円の壁〟資本金6倍、日本語力や実務経験も必須に

 外国人が日本で起業する際に必要な在留資格「経営・管理ビザ」の取得要件が、10月16日に改正された。出入国在留管理庁は、資本金要件500万円を3000万円へ引き上げ、さらに常勤職員の雇用義務化などを盛り込んだ新制度を施行した。

 「経営・管理」ビザは日本で会社を経営したり、事業を管理したりする外国人に交付される在留資格。これまで「資本金500万円以上」「2人以上の常勤職員の雇用」のいずれかを満たせば申請でき、最長で5年の在留が認められていた。
 さらにさかのぼれば、2015年の入管法改正で、「投資・経営」ビザから「経営・管理」に名称変更。日本で起業するための準備期間として4カ月の在留期間が設けられ、外国人は「在留カード」が取得できるようになった。
 改正では、資本金の要件を大幅に引き上げたのに加え、日本語能力が問われるようになり、「1人以上の常勤職員の雇用」「3年以上の経営・管理経験または修士相当以上の学位保持」、新規事業計画について中小企業診断士の確認の義務付けなどが要件となった。

厳しくなった経営・管理ビザの許可基準

 これに対し、YAKホールディングスの子会社でビザ申請のサポートなどを行うYAKソリューションズ(東京都台東区)の事業責任者、楊嶸(やんろん)さんは「日本企業でも資本金3000万円以上の会社は4%しかない。従来から一気にハードルが高くなった」と話す。
 なお、既に「経営・管理」ビザで在留している場合は、一定の経過措置が設けられる。施行の10月16日から3年が経過する日(28年10月16日)までの在留期間更新申請については、新基準を満たさなくても経営状況や今後の改善見込みなどを踏まえて判断される。審査では、経営専門家による評価書の提出を求められる場合がある。
 一方、施行日から3年を経過した後の更新申請では、新基準に適合する必要がある。ただし、経営状況が良好で、法人税を適切にの納付するなどし、次回の更新までに基準を満たす見込みがある場合は、在留状況を総合的に勘案して判断するとしている。

取得者は過去最多「従来の審査甘い」

 出入国在留管理庁によると、経営・管理ビザの取得者は近年急増していた。19年は2万7249人だったが、24年には4万1615人と過去最高を記録。国籍別では中国出身者が2万1740人と、全体の半数を占める。先の政策懇談会ではペーパーカンパニーの存在や、悪用が疑われる国のブローカー対策などが課題として挙げられた。
 外国人のビザ取得やサポートを手掛ける行政書士チェックマーク法務事務所(尼崎市)阪本清爾(せいじ) 10月24日付の読売新聞の記事によると、不動産会社と阪南大学の松村嘉久教授が共同調査した大阪市内の築古ビル5棟では、コロナ禍後の3年間で中国系法人が計677社、本店登記していたという。松村教授は経営・管理ビザ取得を目的とした登記の可能性に言及している。
 入管庁では取得者の職種別統計は公表していないが、楊氏は「肌感覚だが、全体的に貿易業が多い傾向にある。一方で、ペーパーカンパニーのケースも少なくない」と話す。

「経営・管理」の在留申請(認定・更新・変更)の許可件数の推移

在留外国人は過去最多

 国内の外国人労働者数は24年末現在、永住者などを含めて230万2587人。日本に在留する外国人の数は同時点で376万8977人となり、過去最多を更新している。増え続ける外国人の受け入れに対し、今回の改正は注目される。

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