【投資家記者の勉強会】日経平均 3万円を回復なぜ? 海外投資家が今、日本株に注目する理由

兜町の東京証券取引所(東京・日本橋)
兜町の東京証券取引所(東京・日本橋)

 日経平均株価が3万円台を回復し、バブル崩壊から33年ぶりの高値と世間が騒いでいる(5月18日現在)。なぜ高値を更新したのか、今は買うべきなのか? を考察してみた。

 主な要因は海外投資家が日本株(企業)を再評価したからと言われている。東京証券取引所の売買状況を見ると、6週間連続(4月第1週~5月第2週)で海外投資家が約2兆8千億円の「買い越し」となった。海外投資家が今、日本株に注目するのはなぜだろうか。主に下に記載した6つの要因が挙げられる。

①コロナ禍から続く歴史的な円安
②好調なインバウンド需要(他国より遅れてきたアフターコロナの景気サイクル)
③日本銀行(植田和男総裁)の金融緩和継続
④東証のPBR1倍割れの改善要請
新NISA拡充への期待
⑥著名投資家ウォーレン・バフェット氏による日本株追加投資の表明

 円安の恩恵を受けているのは主に外貨を稼ぐ力のある上場企業で、貿易を主とする総合商社や自動車メーカーなどだ。このほか、経済再開で空港や鉄道、百貨店などが回復し、2023年3月期で最終的な儲けを示す純利益が過去最高水準となっている。

 また、世界的なインフレの中で日本は他の先進国と異なり、賃金転嫁にまで至っておらず、日銀は金融緩和を継続。現在、欧米諸国は金融引き締めの真っただ中で、避難先として日本株が選ばれているという話もある。

 東証のPBR改善要請については昨年4月から進められている「市場再編」の取り組みの一貫。上場企業に対して、①資本コストや株価への意識改革・リテラシー向上、②コーポレート・ガバナンスの質向上、③英文開示の更なる拡充、④投資者との対話の実効性向上などが求められている。自社の資産をうまく活用できていない、株価が低迷している低PBR企業が安穏としていられる時代が終わろうとしており、この姿勢が海外投資家から好感されている。

 前述の日経平均に対して海外投資家が4~5月に約2兆8千億円を買い越した一方、国内の個人投資家は1兆1600億円を売り越す真逆の結果になった。おそらくレンジである3万円台からの下落を予想した投資家の空売りもあり、踏み上げによる上昇もあったのかもしれない。

チャートの青丸は、海外投資家が買ったと思われるポイント。移動平均線が収束から上昇のパーフェクトオーダーになっている。

 これから予想されることは、メディアの報道に刺激され、普段、株価を見ていなかった初心者や「買い遅れ」を意識した国内の個人投資家が飛び乗るかもしれない。しかし、周囲に惑わされ、慌てて買ってしまい〝高づかみ〟した経験はないだろうか。今回こそは冷静な判断で株価を注視していきたいものだ。