スウェーデン出身のトロンボーン奏者、クリスチャン・リンドバーグ氏が9月18日、万博会場のフェスティバルステーションで演奏を披露した。午後3時からと同5時からの2回にわたり、来場者を前に多彩な音色を響かせた。

クリスチャン・リンドバーグ氏は、スウェーデンのトロンボーン奏者で指揮者、作曲家でもある多才な音楽家。世界でただ一人フルタイムのソロ・トロンボーン奏者として成功している人物。70曲以上の協奏曲を含む、200曲以上もの作品を初演している伝説的な存在だ。
今回はパートナーにピアニストの白石光隆氏を迎え、トロンボーンとのデュオで行われた演奏は、美しい音色のトロンボーンとリズミカルなピアノの音が調和して聴き入ってしまうほど。満席の観客も物音一つ出さずに、静寂の中、トロンボーンとピアノの音だけが響き渡たった。

日本初披露となるクリスチャン・リンドバーグ作曲の「蜻蛉」や、ピョートル・チャイコフスキーの組曲「スペードの女王」作品68など、全4曲を演奏した。

これまでサックスやトランペットが主役でピアノを伴ったパフォーマンスは聴いたことがあったが、トロンボーンが主役というのはかなり珍しいのではないだろうか? 筆者が知らないだけなのかもしれないが、物凄く貴重なモノを聴かせていただいた気分だ。
演奏後にリンドバーグさんに直接話を聴いてみたところ、「今回で来日は35回目で、日本のことは大好き。前日17日の東京での演奏も含め、日本での演奏時は顔馴染みの観客が多いが、今回の万博会場での演奏は、多くの人が初めて私の演奏を聴く人たちだったので、その表情の初々しさや反応がいつもと違う雰囲気だった」とのこと。
そして、日本の観客はいつも物凄く集中して聴いてくれるので、その点はヨーロッパの観客とは少し違っているそうだ。
また、なぜトロンボーンを選んだのか聞いてみると、「ピアノやチェロ、トランペットもやったことがあるが、トロンボーンのレジェンドJack Teagarden氏の演奏を聴いて、その音色のファンになり、そこからトロンボーンにのめり込んでいった。そしてやってみるとかなり早いスピードで上達して、仕事に繋がっていった」と教えてくれた。
リンドバーグ氏は「トロンボーンの音色は美しくてパワフルで、他の楽器には出せない旋律や音色があることがトロンボーンを特別な楽器にしている」とそのトロンボーン愛を語ってくれた。

当初は午後3時からの演奏を聴く予定だったが、その後にインタビューを行った流れで、午後5時からの演奏も鑑賞することになった。午後5時からは3曲で、世界初演奏のヤン・ サンドストレーム(ペール・エグランド編曲)の「スウェーデン・スモーガスボード」やイーゴリ・ストラヴィンスキー(リンドバーグ編曲)の組曲「プルチネルラ」などだった。
両方を聴いてみると、前半と後半でかなり全体の雰囲気が違って、貴重な体験をすることになった。前半はMCなどはほとんどなく本格的な演奏を聴かせることに集中していて、後半は全体的に構成自体が少しエンタメ風にアレンジされていて、日本語でのトークが入ったりして、前半の演奏と比べると少しユーモアのあるパフォーマンスになっていた。

そのせいか、観客の雰囲気も後半の方がワイワイした感じがあり、みていて面白かった。客層も前半より後半の方がミュージックに近い距離感にいたのではないかと感じた。

演奏終了後に楽器を抱えた白人男性がいたので、聞いてみると、神戸在住のプロのトロンボーン奏者だそうで、「リンドバーグ氏の大ファンで、今回ライブ演奏を聴いて泣きそうになった。自分の演奏している楽器とは全く違う別物だった」とメチャメチャ感動していたのが印象的だった。

今回の公演は、正午から整理券を配布して、無料で聴けるイベントだったのだが、朝9時頃から整理券を求める人の列ができ始め、最終的には700名近い人が列に並んだそうだ。
席数が305席だったため、せっかく並んだのに整理券にだどり着けなかった人もいたほどの人気だったのだ。
「今回聴けなかった、でも聴いてみたい」という人は本日、9月19日にクレオ大阪東(大阪市城東区鴫野西2-1-21)で午後7時からリンドバーグ氏の公演がある。演目は今回万博会場で行ったものと同じで、前後半合わせた7演目になる。

まだチケットも購入可能とのことなので、行ってみるのも良いかも。