北欧パビリオンとグランドプリンスホテル大阪ベイ(大阪市住之江区)を会場に9月2日、ノルディック・フードデー行われた。北欧の食材やフードテック企業などが参加し、来場者に未来の食のあり方を提案する機会となった。
北欧フードフェア
午前中、グランドプリンスホテル大阪ベイで開催された北欧フードフェアには、北欧5カ国およびデンマークの自治領、フェロー諸島から30社を超える食品関連企業が参加。各国の特色ある食産業と最新の取り組みが披露され、実際に手に取った来場者や業界関係者から大きな注目を集めた。

スウェーデンからは、韓国やアメリカでも人気となっているビーガンキャンディ「Bubs(バブス)」を商品に持つ「Orkla Snacks」や、贈り物仕様の美しいパッケージが特徴の「Dream of Sweden」のプレミアム菓子を出展。「The Swedish Food Federation」も参加し、持続可能な農業モデルと国際競争力ある食品産業の姿を紹介。

フィンランドは、「Valio」や「Fazer」が登場し、抗生物質フリー畜産や世界最高水準の食品安全を誇る乳製品・菓子類を紹介。そして「Apetit」がバラエティ豊かな冷凍野菜の展開を紹介。さらに「Nordic Oats」や「Kinnusen Mylly/65 Oats」が植物性タンパク質やアークティック・スーパーフードの可能性を提示した。

デンマークは、食品バイオソリューションで世界をリードする「Novonesis」や、フードロス削減アプリで国際的に注目される「Too Good To Go」が参加。水産業では グリーンランドの「Royal Greenland」とフェロー諸島の「Varðin」が北大西洋の恵みを生かした高品質シーフードを紹介。

ノルウェーは、「サーモン寿司40周年」をテーマに、日本との食文化交流を祝った。「MOWI」「SalMar」「Lerøy」など世界有数のサーモン生産者が持続可能な養殖の取り組みを発信。また、「NoMy」が、日本の発酵文化と北欧のフードテックをつなぐ革新的事例として、麹菌を活用したマイコプロテイン開発を紹介。

アイスランドからは、「Icelandic Seafood」が再生可能エネルギーを基盤としたクリーンな食品生産を披露。キャビア、サーモン、サバ、赤魚といった幅広いラインナップが並んた。冷たくきれいな海で生産されるシーフードの美味しさと豊かさに舌鼓を打つ来場者も多くいた。

北欧フードフェアに参加した企業の情報は以下のQRコードから入手可能。

ランチセッション
昼のプログラムでは「ノルディック・フードデー」の理念を「食」を通して体感するランチセッションが北欧パビリオンの1階の展示室で開催され、特別ランチが振る舞われた。



2023年にはWhite Guide Denmarkにより「ヤング・シェフ・オブ・ザ・イヤー」に選出された気鋭のシェフ、セバスティアン・ヒメネス・ガルシア氏が来日し、ランチメニューを手掛けた。


2030年までに「世界で最も持続可能で統合された地域」になるという北欧首相たちの共通ビジョンや、若手シェフの育成と未利用資源の活用に焦点を当てる「Arctic Young Chef」イニシアチブなどが紹介され、「食は文化や価値を伝える最も力強い手段のひとつ」であったり、北欧の食が持つ「自然とともに生きる知恵」と、日本の食に息づく「緻密で洗練された工夫と技術」が響き合い、両者が出会うことで新しい「食」の可能性が広がっていく、というようなことが語られた。
プレスカンファレンス
午後から行われたプレスカンファレンスでは、各国の代表が自国の紹介を行った。各国共通しているのは、農産物や水産物を育てる際に自然と調和したやり方を採用し、環境に優しく、そして健康的で安心して食べられる食材になるようにしていることだった。持続可能性のある製法や仕組みを取り入れ、SDGsに配慮した生産活動で、最大の結果ではなく、最良の結果を得ることを求めている、そんなメッセージが伝わってきた。
日本と同じく、自然に敬意を払い、四季を持ち、海に囲まれた環境にある北欧の国とは、共通する点が多々あり、未来に向けてサステナブルな食ビジネスやフードサプライチェーンを形成していくことには大きなメリットがありそうだ。
スウェーデンとフィンランドは植物性タンパク質やオーツを紹介し、「Nordic Oats」プロジェクトを日本で展開することも発表され、ヘルシーで環境負荷の少ない食品として注目を集めている。
デンマークからは持続可能なシーフードのサプライチェーンを支援するサービスを提供する企業や微生物技術を活用した企業、フードロスになる食材を市場に提供するためのアプリを開発、運営する企業などが紹介された。
サーモンで有名なノルウェーは、40年前にサーモンを日本に紹介した結果、日本で寿司ネタとしてその地位を確立し、ノルウェーから日本への輸入品の中心製品になっている。またノルウェーは世界でもトップクラスのコーヒー消費量を記録するほどのコーヒー好きが多く、コーヒーへのこだわりもそれだけ強いので、ノルウェーで厳選されたコーヒーを紹介していた。
アイスランドは、再生可能エネルギーによる食料生産や魚の副産物を余すことなく活用するゼロ・ウェイストの取り組みを紹介していた。
各国は小さくても、5カ国集まると、相当な情報量になり、ここでは全部を紹介することはできないが、総じて各国の発言で出てくる言葉は「持続可能性」「自然との調和」「ヘルシーで環境負荷が少ない」「サステナブル」「再生可能エネルギー」「無駄をなくす」などで、伝えたいメッセージはとても明確だ。
大量の食材を毎日廃棄している日本にとっては身にしみる言葉ばかり。こういう取り組みをしている国や企業との関係が深まることで、日本でも持続可能性や自然との調和にもっと配慮した仕組みが増えていくことを期待したい。