【記者の投資勉強会】なぜ、フジテレビの株は買われているのか?

 元タレントの中居正広氏の女性トラブルを発端に、フジテレビに批判が集まり、多くの広告主がテレビCMをキャンセルする事態となった。先月28日の記者会見は10時間以上にも及び、経営陣トップは辞任を余儀なくされた。
 ところが、フジテレビの運営会社であるフジ・メディアHDの株価は今年に入り約50%上昇(2月5日時点)している。不祥事なのになぜ、こんなにも買われているのか?

 大荒れが予測される6月の株主総会に参加したい個人投資家が大勢いると思われるが、ここまで株価を動かすのは大口の投資会社の存在が考えられる。彼らが考えているのは、この機会に旧体質の放送局事業の経営が刷新できるチャンスとみており、同社の真の企業価値が実現できる可能性があるとの期待で株価が上昇している。

 同社は放送局事業のほか、都市部の一等地に不動産を所有し、都市開発や観光事業からも多くの収益を上げている。25年3月期の決算資料をみると、放送局事業の売上が74・5%に対し、不動産関連事業は21・8%であるにも関わらず、営業利益は真逆の構造となっている。利益比率は放送局事業が32・0%に対して、不動産関連事業が65・6%となっている(その他事業除く)。加えて、市場が評価する株価に対して、1株当たり純資産の何倍であるかを示すPBRが0・49倍(11月28日時点)と、東証のPBR改善要請の1・0倍を大きく下回っているためだ。

思惑で買い、事実で売る

 「思惑で買い、事実で売る」という相場格言が頭に浮かんだ。話は変わるがトランプ米政権の関税が話題だ。メキシコやカナダ、中国への関税規制の発表があるたびに日米ともに株価が大きく下落するなど、同氏の言動に市場が振り回されている。一方で実施日(2月4日)になると、株価が戻しているケースも多い。過去を振り返ると、トランプ第1次政権だった2018年も鉄鋼やアルミニウムの輸入制限の発表時は当時の株価で約500円安となり、実施日には底を打ち株価が反転上昇していた。つまり、「発表=思惑」で下がり、「実施=事実」で買い戻されているのだ。

 「市場は不透明を嫌う―」発表時は、この関税がどういう影響があり、どのくらいの期間に適用されるのかという不安を市場は織り込む(恐怖する)。そして実施日は、これらの内容が判明し、トランプ氏の言動は無理難題を押し付けるものではなく、理性的な〝ディール〟(取引)なんだとホッとする。つまり事実が確定したのだ。

 フジ・メディアHDとトランプ米政権の関税についての話題は、株価の事象は真逆であるが、「思惑で買い(売り)、事実で売る(買う)」と格言どおりの動き方をしている。