【わかるニュース】「新冷戦時代」到来!!「国内分断」沈む欧米列強

 今週末の27日(日)は衆院選の投開票日。船出した与党・石破政権に対する初の国民評価が下る。
 日本の話題が総選挙一色で染まる中、極東アジアに目を移せば何やらキナ臭くなってきている。中国が空母も展開する大規模な軍事演習で台湾を包囲して脅し、北朝鮮は同胞の隣国・韓国を〝最も敵対する国家〟とみなして両国間道路を爆破。さらにウクライナに侵攻するロシアを支援するため北朝鮮が約1万人の大規模な派兵を決めたとの情報も入ってきている。そして、再来週の11月5日(日本時間6日)には、新たな米大統領も決まる。〝新冷戦時代〟の開幕前夜とも言われる国際情勢を整理してみよう。

「新冷戦時代」到来!! 「国内分断」沈む欧米列強
中国軍が新たな軍事演習を台湾周辺で開始 =2024年10月14日(ロイター/アフロ)

「中露朝3国」結びつき背景は!?
 耐え切れぬ米国の着地点

1票こそ民主主義の根幹

 かつての国家はすべて専制主義だった。国王のような絶対的な統治者が、軍事や経済産業などを支配。民衆は黙って従うしかなかった。それが選挙という公平なプロセスで民衆が直接トップを選べるようになり、貿易を含めた内外往来を活発に行える民主的な自由主義が台頭。20世紀の2つの大戦を経て、世界では『専制VS自由』のせめぎ合いが続いている。
 日本も79年前の敗戦を機に民主化した。戦後生まれの世代が空気のように「当たり前」と思っている現在の自由主義は、1票を投じることで成り立っていることを改めて思い起こしてほしい。

朝鮮半島の対立激化

 北朝鮮は現代では珍しい三代世襲国。20世紀には多かった冷戦で分断された国家の唯一の現存国でもある。
 国を率いる金正恩党総書記は、1月の最高人民会議で韓国を「最も敵対する国家」とし、朝鮮半島の平和的統一を断念すると宣言。南北協力の象徴でもあった道路や施設を爆破し、軍事境界線付近を要塞化してしゃ断。韓国から飛来したとされる風船やドローンに対し「戦争の導火線に火を付けようとする特大級の犯罪行為」とののしり、「主権侵害に対する武力行使には核兵器を含むあらゆる攻撃を行う」と宣言した。
 金総書記とプーチン露大統領は6月の首脳会談で、軍事援助を規定した「包括的戦略パートナーシップ」を結んだ。これに基づいて、北朝鮮から特殊部隊を含む4旅団1万2千人の兵士がロシア入りしたとの情報がある。ウクライナ戦争への投入は不透明だが、派遣は両国ともにメリットがある。
 ロシアにとってはすでに7万人超とされる自国の戦死者の補充になるし、北朝鮮にとってはロシア製の高度なコンピューターによる指揮統制技術や通信、監視偵察システムを兵士らが学べる。さらに兵士の衣食住費用や日当をロシアがまかなってくれることで、大規模輸出に匹敵する外貨も得られる。北朝鮮が抱える「核廃棄せよ」の問題も、国連の常任理事国で拒否権を持つロシアが後ろ盾となってくれることで制裁の心配がなくなるため、大手を振って開発できる。
 こうなると当然、韓国は反発。今年が任期5年の折り返しだった尹錫悦大統領は「重大な脅威」と懸念を示し、北朝鮮の敵国宣言に対しては国防部が「韓国民に危害を加えれば、北朝鮮の体制は終わる」と警告している。
 しかし、国会での勢力は北朝鮮との融和策一辺倒だった文在寅・前大統領派の野党優位で、文政権時代には脱北者を冷遇してきた過去があり、足元は不安定。今後は半島内の両国切り離しは終了しても、海域境界線は互いの主張が交錯しており、いつ砲撃や艦船の小競り合いが起きても不思議ではない。

プーチンは一筋縄で行かぬ

 ロシア政治を語る時は、プーチン大統領のしたたかさを知らねばならない。近年でも民兵組織「ワグネル」のプリゴジン代表や野党指導者ナワリヌイ氏など周辺に突然死する政敵が多いのも特徴だ。旧ソ連諜報機関KGBの出身で、決して素顔をのぞかせない。就任直後のトランプ米大統領にうまく取り入った日本の安倍総理が、逆にプーチン大統領には北方領土返還交渉でまんまと手玉に取られたように一筋縄では行かない。
 プーチンが唯一間違えたのが、延々と続くウクライナ戦争だと見る。2014年に黒海の出入り口に位置するウクライナ領クリミヤ半島を無血でロシア領へ併合できたから、今回のウクライナ東部侵攻も「簡単に終わる」と思っていたはずだ。しかし、ゼレンスキー大統領の思わぬ反撃に遭い、来年2月で丸3年にもなる。
 欧米各国はウクライナ支援を今も諦めていないが、いくら武器や物資を与えてもすでにウクライナ側の戦死者は3万人を超えたとみられ、人口3800万人の国では兵員補充がないと先行きは見通せない。
 ロシアは産油国で小麦生産量は世界第3位。つまり、経済制裁で音を上げることはないし、北朝鮮兵を動員させるような裏技を画策できる交渉力もある。それが分かっているから、欧州集団防衛のNATO(北大西洋条約機構)各国もウクライナの加盟に対して慎重姿勢を崩さない。

中露海軍が合同演習「北方連合 2024」
中露海軍が合同演習「北方連合 2024」 =撮影日不明・提供写真(Russian MOD/SWNS/アフロ)

台湾併合は確信目的

 露朝の接近を複雑な思いで静観するのは習近平の独裁体制が続く中国だ。「国家主席は2期10年まで」の憲法を自ら改定し、前人未到の3期目は2027年までだが、「建国80年となる29年までに改革の任務を完成させる」と新たな目標を定めていることから、実質は無期限に近い。 〝改革の任務〟とは『台湾併合』だ。
 折しも台湾の頼清徳総統が10月10日の建国記念日「双十節」で演説し、「中国に台湾を代表する権利はない、決して隷属しない」と宣言。これは中国が最も嫌う『一つの中国、一つの台湾』で、すなわち〝台湾の分離独 立〟を意味する。
 これが絶対許せない中国は10月14日、台湾を軍艦で取り囲む大規模軍事演習を展開。陸海空軍だけでなく核を扱うロケット軍まで出動させて威圧した。
 中国はロシアのウクライナ侵攻で多くを学んでいる。まず、空爆や地上侵攻の従来型戦闘より一気に首都を攻め政権トップを捕獲または殺害する短期決戦の方が有効なこと。だから実戦では取り囲んでの上陸作戦より、ピンポイント攻撃の可能性が高まる。さらに米国が「『核兵器使用も辞さぬ』と脅せば参戦しない」と分かったことも重要だ。すでに中国にとって台湾併合は「やるか、やらないか」ではなく、「いつやるか?」だけとなっている。
 中国にとって北朝鮮は、朝鮮戦争で共に米韓中心の国連軍と戦火を交えた弟のような国。しかし、今の金総書記はロシアと急接近して指示通りに動いてくれない。それでも中露朝3国関係が良好なのは米国という共通の敵がいるから。「敵の敵は味方」という簡単な理屈だ。

米国「終わりの始まり」

 まもなく米大統領選。中露朝3国はトランプ前大統領の返り咲きをジッと待っている。それはトランプが自由で民主的な理念を守る大義より、「損得」で物事を判断するタイプだからだ。
 米国は過去、内戦の南北戦争以外で、自国土が戦禍にさらされたことがない。面倒な理念さえ捨てれば、欧州のウクライナもアジアの台湾もどうなろうが、軍事的経済的に米国へ直接影響があるわけではない。つまりトランプが相手なら、交換条件次第で「何とかなる」と中露朝3国はにらんでいる。
 間違えてはならないのは「トランプ氏は国民が直接選挙で選んだ大統領」という事だ。彼の主張は2000年の大統領選時から変わっていないのに一介の泡沫候補から実際に大統領となり、再び返り咲こうとしている。それは米国民自体が「理念より実利」を選んだことになる。
 自由主義を支えた列強先進国は揺れている。英国は保守党から労働党に14年ぶりに政権交代し、フランスは新首相に中道右派を就けた。ドイツは極右政党の台頭で政権弱体化が著しい。〝世界の警察アメリカ〟はゆっくりと「終わりの始まり」で退場し、歴史の過程へと消えていく…。そんな転換期が訪れるのかもしれない。