今、「十三」が注目される理由 うめきた、新大阪、関空、夢洲につながる未来

 阪急電鉄3線の結節点「十三」駅周辺で大規模再開発が進んでいる。高層マンションに市立図書館が入り、地元の交流空間や学校を一体整備する計画だ。また、阪急電鉄の新線構想で利便性が格段に向上する見込みもある。「新しい十三」の未来を展望した。

もと淀川区役所跡地に誕生する大規模複合施設の完成イメージ(阪急阪神不動産提供)

マンション販売が好調な理由

 阪急十三駅からほど近い、もと淀川区役所跡地一帯で「官・民・学」による複合開発が始動している。東側敷地(約7300平方㍍)には阪急阪神不動産が地上39階建て、総戸数712戸のタワーマンション「ジオタワー大阪十三」のほか、市立図書館、保育学童施設、スーパーマーケットなどを整備。西側敷地(約1600平方㍍)には学校法人履正社が運営する医療系専門学校が今年4月に開校した。

 「予想を大幅に上回る反響で、すでに250戸を超えるご成約をいただきました。ファミリーやDINKs(夫婦のみ世帯)、シニアなど幅広い世代のお客様から関心を寄せていただいていることに十三のポテンシャルを感じています」と話すのは、同物件を販売する阪急阪神不動産の井藤綾音さん。顧客の購入動機に共通しているのは、十三という街に対する「未来への期待感」だという。

十三からうめきた、関空へ

 十三は、大阪で現在、開発が進むビッグプロジェクトに全て「ダイレクトアクセス」が可能となる予定だ。今月6日に先行まちびらきを迎えたグラングリーン大阪に直結するJR「大阪」駅地下ホームと十三駅を結ぶ阪急の新線「なにわ筋連絡線」の整備が検討されている。阪急電鉄の新たな路線は、2031年春に開業予定の「なにわ筋線」を経由し、関西国際空港まで乗り入れる方針を打ち出している。これが実現すれば、十三から関西国際空港まで1本でアクセスできるようになる。

十三から新大阪へ

 新大阪駅周辺は22年10月、規制緩和や税制特例が受けられる「都市再生緊急整備区域」に国から指定された。リニア中央新幹線で東京〜大阪間が67分で結ばれることによる「スーパー・メガリージョン構想」を見据え、同新幹線や北陸新幹線の新駅の設置が想定される40年をめどにまちづくりが進められる。

 西日本の玄関口としてますますの発展が期待されるJR新大阪駅と阪急十三駅を結ぶ阪急の新線「新大阪連絡線」の整備も検討されている。十三から新大阪に直結することで新幹線への乗り換えがさらに便利になるだろう。

 阪急としては、関西国際空港と新大阪に乗り入れることで、観光客を阪急沿線へ取り込む狙いがある。阪急3線の結節点である十三はさらににぎわいを増しそうだ。

 十三から夢洲へ

 大阪・関西万博、IRの開催地「夢洲」には十三から「航路」でのアクセスが検討されている。国土交通省近畿地方整備局は、淀川の河川敷に「十三船着場」の整備を進めている。地震などの災害で陸上交通網が麻痺(まひ)した際に、救援物資や資材などを船で運ぶ拠点とする計画だ。

 同船着場は今年度中の完成を目指しており、来年4月に開幕する大阪・関西万博会場や大阪市内中心部、京都方面を船で結ぶ発着場としての活用が検討されている。昨年9月には斉藤鉄夫国土交通相が現地を視察。斉藤氏は「非常に魅力的な計画。関西の観光の目玉になってもらえれば」と期待を寄せる。

万博会場となる夢洲への航路が検討される十三船着場の整備イメージ(大阪市提供)

十三駅直上に高層ビルを計画

 2つの新線が計画されている十三駅もリニューアル予定だ。新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会の資料によると、十三の新駅予定地は、既存駅の北側(神戸線、宝塚線の間)で地下ホームを想定している。

 同資料によると、阪急電鉄は、40年を目処に十三駅の直上に高層ビルの建設を検討している。駅の北側・南側にある3カ所の用地を含めた一体的な都市開発プロジェクトを展開し、にぎわいや交流機能を強化しようという考えだ。

 うめきた、新大阪、夢洲、関空全てにダイレクトアクセスができる十三の利便性は他にはない魅力を秘めている。「将来的に、十三を西宮北口と争う〝住みたい街ランキング〟の上位に押し上げたい」。阪急阪神不動産の役員が記者発表時に語っていた展望が現実となる日もそう遠くはなさそうだ。

十三駅周辺で検討されている開発計画(新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会の資料を元に作成)