〝かぜ〟5類移行の背景は何? 【10.28施行】 発熱の有無は問わない

 かぜも5類に? 厚生労働省が7月の感染症部会で、急性呼吸器感染症を感染症法上の5類に位置付ける方針を示し、10月28日に施行される。その背景は何かを取材した。

厚生労働省=東京・霞が関
厚生労働省=東京・霞が関

感染爆発に備え、動向を把握

 急性呼吸器感染症とは、急性の鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎の上気道炎、あるいは気管支炎、細気管支炎、肺炎の下気道炎を指す多彩な病原体による症候群の総称のこと。つまり、一般的な「かぜ」も含まれる。
 5類移行検討の背景について、厚労省健康・生活衛生局の感染症対策部感染症対策課の担当者は「パンデミックを引き起こした新型コロナウイルス(COVID─19)を筆頭に、SARS、MARSなど未知のウイルスは呼吸器感染症が多く、感染が広がりやすい。将来に備え、発生動向を把握するためモニタリングをできる限り早く行い、傾向やレベルを把握することが目的」と話す。
 これまで、急性呼吸器感染症は、発生数が不明で各々の疾患の発生割合が把握できていなかった。このため、現行では感染症法上の位置づけがなされていない急性呼吸器感染症を5類感染症に改正することで、早期に感染症の広がりを把握し、発生の予防とまん延を防ぐ狙いがある。
 世界保健機関(WHO)や米疾病予防管理センター(CDC)では急性呼吸器感染症、呼吸器ウイルスの監視がすでに行われているという。前述の感染症対策課担当者は「対策している国が多く、日本も国際基準に合わせていく方向」と述べるが、「米国以外にどこの国が行っているのか」を問うと「分からない」と回答した。
 また、現在の「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」を廃止し、COVID─19やその他の呼吸器感染症を含めた包括的な「急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針」を策定するとしている。

恐怖心あおる懸念も

 急性呼吸器感染症かどうかはこれまで通り、問診と診察を行った医師が感染症と疑ったとき。さらに、呼吸器感染症が「発熱しない」ケースもあることから、「発熱の有無は問わない」。
 内科・消化器内科くろだクリニック(京都府木津川市)の黒田雅昭院長は「例えば鼻炎の場合、ウイルスによるものか、アレルギーによる炎症なのか判断が難しい」と話す。一方、診察料の引き上げや、患者の負担などは特にない。「新型コロナの影響により、せきをしただけで距離を置かれるなど、今もその社会の風潮が残る中、呼吸器感染症を5類にすることで恐怖心をあおってしまうのではないかと懸念している。一方で公衆衛生の意識を高めることができる対策でもある」(黒田院長)
 急性呼吸器感染症の5類は、インフルエンザや夏に流行の多い手足口病などと同様に、指定届出機関のみが報告の対象となる「定点把握」。1類から4類までのすべてと5類の一部はすべての医療機関に報告義務がある「全数把握」に分類されている。
 なお、急性呼吸器感染症は英語表記したAcute Respiratory Infectionの頭文字を取って、ARIと略されることもある。