安倍晋三元首相の死去を受け、今後の日経平均株価への影響はどうなるのか。本コーナーはあくまで株価のみに注目して考えてみた。
襲撃事件のあった8日の日経平均株価は、事件直後から売りが広がり反射的に午前の終値から200円ほど下落したが、コラム執筆中の現在(15日時点)は落ち着いている。
安倍氏といえばアベノミクスだ。①インフレ率2%まで無期限に行う金融緩和(=量的緩和)、②大胆な予算編成を行う財政拡大、③民間投資への喚起の3つを柱にした「三本の矢」が国内外の投資家に好感され、在任中の株価は2倍以上になった。下表は各首相の任期中の日経平均株価の動きだが、安倍氏が在任中の株価上昇率が際立っている。
では、先日の参院選を大勝した岸田政権は今後の株価にどう影響するのか。株価を動かすポイントは「財政政策」と「金融政策」だ。
積極財政の安倍氏に対し、岸田首相は緊縮財政派といわれる。「消費減税なら年金3割カット」と首相を支える茂木俊充幹事長が発言したことからも経済成長より財政の収支(プライマリーバランス)を重視していることが伺える。
一方、年末にまとめる「資産所得倍増プラン」には注目したい。もともと岸田首相は賃金の所得倍増を掲げていたが、欧米に比べ日本は賃上げがおぼつかず、投資を前提にした金融資産の増加に目線を変えている。具体的には少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(イデコ)の拡充だ。「貯蓄から投資へ」が前進すれば、株式市場にも好影響を与えそうだ。
また、金融政策と円安への対応も注目したい。米国は歴史的なインフレ率(9・1%)で金融引き締め(利上げ)を加速する中、日本は金融緩和を続けているため、この日米の金利差が円安の要因になっている。日本の金融緩和は2013年に当時の安倍首相と日銀の黒田東彦総裁の下で始まった。世界的な金融引き締め局面で日本はどう対応するのかとメディアが騒いでいるが、日本のインフレ率は2・5%、物価変動が激しいエネルギーと生鮮食品を除くと0・8%なのである。
金融引き締めは、市中のお金の量を減らす(助成金などを減らす)こと。一般的に、株を買うお金が減り金利が上がると、株価は下落する。
いずれにしても8~9月に行われる内閣改造の人事で、安倍氏実弟の岸信夫氏(現・防衛大臣)など安倍氏の遺志を継いでいる人や政策がどのようになるのか、チェックしておく必要がある。