【外から見たニッポン】はちゃめちな大統領選挙戦 黒人女性のハリス VS 白人男性のトランプ

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 バイデン大統領が候補から退いてから、カマラ・ハリス副大統領は民主党内で圧倒的な支持を得て、幅広い層からの支持と300億円を超える寄付を集め、今や飛ぶ鳥を落とす勢いです。

 かたや、ドナルド・トランプ元大統領は、暗殺未遂事件で拳を振り上げた時は、選挙戦が終わったかと思うほどの神がかり的な上り調子でしたが、その後戦略が右往左往し、ハリス氏への個人攻撃や人種差別的な発言を繰り返して支離滅裂な状態です。

 しかし現実はもっと複雑です。ハリス氏に大きな期待と支持が集まっている最大の理由は、トランプ氏だけは大統領にさせてはいけない、という強烈なトランプアレルギーの国民がハリス氏に集まってきているだけで、ハリス氏と支持層の間のハネムーン期間なだけなのです。実際、歓声を揚げている人の大多数がハリス氏について詳しくは知らないでしょう。

 ハリス氏はこれまで不法移民の国内定住をサポートする法案や地球温暖化対策を推進する法案を支持しましたが、これらは現在ハリス氏を支持している労働者階級がインフレーションによる物価高で苦しめられている遠因になっています。ほかにもマリファナの合法化を支持したり、警察機構の予算削減も強力に押し進めました。結果的に多くの地域で安心・安全な生活が大きく脅かされています。

 またハリス氏は、選挙演説は行っていますが、バイデン氏が撤退して以降、まだ一度もカメラの前でジャーナリストからのインタビューを受けておらず、メディアや世間が懸念している多くの疑問に対して何も答えていません。私は、ハリス氏が笑顔で演説する姿からは不安しか感じれらません。中身が薄く上滑りしている様にしか聞こえないのです。世間の趨勢から考えて、現段階で接戦州で誤差の範囲でしかリード出来ていないことが今後を予見しているように思えてなりません。

 一方、トランプ氏は遊説で同じメッセージを繰り返し発しながら、ハリス氏を攻撃したり、自分に対する反抗的な質問には嘘や言いがかりで対抗するという残念な行為を続けています。先日は黒人ジャーナリスト協会主催のイベントに登壇し、黒人女性の司会者から、ハリス氏の人種に対するコメントについて追求され、暴言を吐き、自らを窮地に追い詰める事態になっています。また彼は「I do not need your votes. I have so many votes」と各地で繰り返し発言しています。これは「自分のことが気に入らないのなら、自分に投票するな」と、その投票者を切り捨てる行為です。それを平気で言ってしまうことから、彼が投票の結果など気にしていないからではないか、との憶測があります。2021年に何が起こったかを考えると、選挙の結果が彼の気にいるものでなければ受け入れない、という意思表示とも取れるのです。これこそ民主主義の破壊であり、最悪の事態と言えるでしょう。

 ハリス氏の実績に華々しいものはなく、今後何を看板に戦って行くのか全く想像もつきません。対するトランプ氏も大統領として4年間国に尽くしたのが政治家として唯一の実績です。今後、ハリス氏とトランプ氏の間で討論会が行われ、そこでまともに政策論を戦わせてくれるのか、それともはちゃめちゃなやり取りが交わされるのか、今後の展開が全く見えない大統領選。歴史上稀に見る低レベルの戦いにならないことを祈るばかりです。