Spyce Media LLC 代表 岡野 健将
米大統領選は7月22日の早朝、バイデン大統領が出馬を辞退し、ハリス副大統領を候補に推すと発表。全てが急展開に動き出しました。
カマラ・ハリスの名前を聞いても、ほとんどの人がピンと来ないのではないでしょうか? 実は多くのアメリカ人も同じ感覚を持っています。副大統領に選ばれる人は、大統領になる人が苦手とする支持層に食い込める人物であることが最優先されるため、選挙後に注目を浴びることはあまりありません。ほとんどの副大統領が議会トップや有力知事より知名度が低いのは当然なのです。
読者もトランプ政権時やオバマ政権時の副大統領を覚えていないでしょう。まして、彼らの実績まで知っている人は少ないはず。
法律上は、大統領に何かあればその地位につき、全権を掌握する大事な役割ですが、実際には陰の存在と言えるかもしれません。
ハリスは検事を経てカリフォルニア州の司法長官にまで上り詰めた後、上院議員を一期務めて副大統領になりました。父はジャマイカ出身の経済学者、母はインド出身の内分泌学研究者で、子育て経験のある女性というアピールポイントはありますが、政治に関しては未知数です。
ハリスがこの3年半で取り組んだことは国境の警備と防衛ですが、バイデン政権で最も失敗した政策が移民のコントロール。大量の不法移民が毎日テキサス州など南部の国境を超え国内へ入ってきました。これに怒ったテキサス州知事は、不法移民をバスに乗せ、民主党支持のニューヨークやシカゴなどの大都市へ移送。これら大都市は不法移民であふれ返り、治安悪化や移民ケアの莫大(ばくだい)な予算を取られ、市民への公共サービスが低下する事態に陥っています。当初は受け入れを歓迎していたニューヨーク市長も、途中から「これ以上送ってこないでくれ」と懇願する状況に追い込まれました。
バイデン政権時に入国した不法移民は730万人に達すると言われ、米史上過去最大とも言われます。この政策責任者がハリスで、指導力や政治力のなさを共和党に責められています。また、トランプが国境に巨大な壁建設を推し進めたため、ハリスの弱腰さが余計に目立ちます。
知名度の低さ、国政での実績のなさなどが弱点とされていますが、検事として、司法長官として、そして上院議員としてキラリと光る実績を残してきていることは事実ですし、初の女性・初のアフリカ系・初のインド系としてカリフォルニア州司法長官を務め、初の女性・アフリカ系・アジア系の副大統領であることも事実なので、個人としての実績は十分かもしれません。
また、オバマと同様に移民の子であり、有色人種であり、おまけに女性という点は、白人至上主義のトランプやバンス候補と対極。女性や有色人種などのマイノリティー票を獲得する武器は備えていると言えるでしょう。
今後、ハリス候補が正式に民主党代表になるか、誰を副大統領候補に選ぶかも含め、プロセスが進めば状況は変わります。バイデン大統領の不出馬で多くの民主党議員はハリス支持を表明しており、大きなうねりを起こせれば面白いレースになりそうです。