正直大家さんの不動産投資 そのまま体験談 【下】 Spyce Media LLC代表 岡野健将

正直大家さんの不動産投資

 全3回に渡り、私が体験した不動産投資をありのままに読者にお伝えするこの企画もついに最終回。時間を見つけては見学に行った築古物件数が20を超えたあたりから、何となく自分なりの判断基準が固まってきたある日、一本の電話がかかってきた。

総投資額を4年で回収

 その電話は、実家の最寄り駅前にある不動産屋から「希望の条件を満たす築古物件が出た」という連絡だった。このときなぜか、詳細もわからないのに「この物件を買う」というひらめきがあったのを覚えている。
 実際に現地に行くと、残置物が大量に残っていて10年以上も空き家という物件だった。しかし、建物自体に大きなダメージはなく、リフォームで対応できると判断。駅から10分と少し遠いが、スーパーまでは徒歩1分。駐車場も近隣にある。
 不動産屋は「これは相続物件で、売主は別の都市で長く生活している。この物件に戻る気はなく、長期間空き家状態。残置物も自分たちで処理できないし、片付けたところでリフォームしないと住めないと言っている」と教えてくれた。
 「相続物件」「売主は他所で生活している」「空家状態が長い」─。
 この状況から売主は早く売りたいと思っていることが想像つく。残置物や改装の必要性を知っているから、高く売れないことも理解している。
 見事に条件がそろったので、念願の1軒目として購入。物件価格以外の諸費用は、仲介してくれた不動産屋への手数料、司法書士へのサービス料と登記費用、固定資産税の支払いで、このときは全部で90万円ほどだった。

 その後、大家さん仲間に紹介してもらった業者に現地へ来てもらい、どこをどうリフォームするかと、費用について相談。すでに何度か他の大家のリフォームを手伝った経験から、ある程度の話は出来るようになっていた。
 リフォームの際はやり過ぎに注意。やればやるほど物件はきれいになるが、得られる家賃は増えない。賃料の近隣相場は無視できないからだ。借りる側の立場で冷静に判断する必要がある。何をリフォームするかしないか、どこまでやるか、をじっくり検討することが大切。
 借りる側も新築や築浅物件でないことはわかっているので、細かいことまでは気にしない場合が多く、「ほどほど」のラインを上手に引く必要がある。
 気になるリフォーム費用は、材料費、業者への支払い、DIYをするときの自分の交通費、手伝いに来てくれる大家仲間の飲食費などがかかる。この物件は残置物が大量にあったので、処理に15万円程度かかった。
 と、アドバイスしておきながら私自身、壁紙やクッションフロアなどおしゃれなデザインに少しこだわりすぎてしまう。さらに、予定外の大掛かりな工事までしてしまい、当初の予想をオーバーしてしまった。それでも150万円程度で済んだ。
 後に入居者にこの物件を選んだ理由を聞くと、私がこだわった部分は全く選択理由とは関係なかった。

 リフォームが無事に終わるとやっと入居者探し。個人的にはこれが一番難敵で、思ったよりも入居者を見つけるのに苦労した。
 不動産業者には、サイトへの登録だけをして、客をただ待つだけの業者もいる。このため、できるだけ多くの業者と話をし、波長の合うところに任せることを薦めたい。よほどでないと、1社に絞らず複数の業者で競わせる方が確実。仲の良い業者が出来て、一生懸命動いてくれるなら専属でお願いしてもいい。
 また、仲介業者への手数料(通常は家賃の1カ月分)を上乗せして頑張ってもらう方法もある。物件の空き状態が長く続くより、1日でも早く決める方が得策だ。
 賃貸するときの注意は、家賃を相場より少し下げたり、ペットOKにするなど借り主の希望に柔軟に対応すると借り手を見つけやすくなる。 

 無事に入居者が付き、家賃収入が毎月振込まれるようになると、後は何もすることはない。トラブルが発生すればDIY大家として自ら修理してもいいし、業者に頼んでもいい。
 私の場合、特に大きなトラブルもなく、1年で物件の購入費用を回収。2年でさまざまな手数料や固定資産税、不動産取得税、 火災保険料なども回収し、リフォーム費用の一部も回収できた。あと2年すれば投資額全てを回収できる。物件価格だけで見ると、表面利回りは100%超え、総投資額を対象にした実質利回りは約25%だ。
 昨年、淡路島に購入した物件は、購入価格30万円、リフォーム費用200万円弱。現在、家賃6万円で、約4年で投資額を回収予定。淡路島は不動産バブルが続き、仮に利回り10%で売り出しても投資額の3倍以上では売れる計算になるが、実際には今の淡路島で利回りが2桁になる物件はほとんどなく、もっと高くても売れると考えている。
 物件を購入するペースは人それぞれ。私は年に1軒のペースで買い足しており、あと2軒も購入すれば、多分老後は安泰だ。

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏

【岡野健将プロフィル】
Spyce Media LLC代表。米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校卒業。経営学専攻。ニューヨーク市で起業し、上場企業やベンチャー企業などに対して米国の市場調査やマーケティング、企業の戦略分析を行う。トップビジネスパーソンやベンチャーキャピタリスト、起業家、企業経営者などをインタビュー取材。最新ビジネス情報を集めたビジネスニュースレターを発行。中小企業同友会や商工会議所、民間企業にてビジネスや起業に関するセミナー講師を担当。経営歴20年以上。