「客引き」の規制強化 7月からガールズバーなども禁止対象へ


▲京橋の商店街で客引きをする女性ら

 〝夜の街〟にはびこる悪質な客引き。「特に最近はひどい」と地元を嘆かせ、せっかく戻り始めた客がうっとうしさから「逃げてしまう」と心配する声が上がっている。路上の客引き行為は大阪府の迷惑防止条例で禁止されているが、ホストクラブやキャバクラといった「接待」を伴う業態の店に限られる。最近目立ってきたガールズバーなどは対象外で、警察も取り締まることができなかった。しかし、苦情が増え、悪質行為が横行していることで、大阪府警は条例改正に乗り出した。対象の業態を拡大し、地域も大阪府内全域にした。施行は今年の7月1日となる。

 〝悪質な〟客引きについては、これまで幾度となく問題になってきた。その都度、条例による取り締まり強化などが行われている。キャッチバーと呼ばれた「ぼったくりバー」では、連れ込まれた客から死者が出るほどの凶悪さだ。ホストクラブが流行した時には〝借金地獄〟に落とされた女性が「返済のために風俗勤め」の〝悲劇〟が多発した。キャバクラもいろいろと問題ある店の強引な客引きにによる苦情が多かった。その結果、大阪府の迷惑防止条例で「異性間による接待を伴う営業」による客引きは禁止された。


(注記)平成23年から令和3年「統計値(暫定)」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反「客引き」、大阪府迷惑防止条例「不当な客引き等」の検挙人員の合算値)=府警HPから

 ところが〝夜の街〟にはいつものことながら、次から次へと新しい業態が現れる。「異性間による接待」は「ニューハーフクラブ」や「ミックスクラブ」などという店によって「同性間による接待」が出現した。今、最も客引きが活発になっている「ガールズバー」は「カウンター越し」の接客で、「接待はしない」を前提としており、これも条例の対象外となる。この他にも「メイドバー」など、それこそ「称する名前は違えども、実態は変わらない」店がいろいろとあって、こうした対象外の店による悪質な客引きが横行しているのが、最近の実態だ。

〝悪質〟増えている

 ミナミと並んで以前から客引きが目立った京橋を歩いてみた。大阪環状線京橋駅の北口。庶民的な飲食店が立ち並ぶ一角だが、構内に一歩足を踏み入れれば、環状線に接して建つフェンス沿いに若い女性がずらりと並んでいる。通行人が目を合わせると声をかけてくる。それを嫌ってか、反対側に寄って歩く人が多い。

 客引きは時間が早い夕方だと、2~3人と少ないが、夜も更けるとその数を増やし、10人ほどがすぐに確認できる。しかも最近では、国道2号を超えたあたりにも広く出現しており、かなり増えていると実感する。

 近くの飲食店で働く店員は「ほとんどがガールズバーの客引き」で、なかには「ぼったくり」の店もあるという。「最近はとくに悪質になった。よその店の前で、しつこく客引きしている。これでは業務妨害やろ。商店街に貼っている〝客引きSTOP〟のポスターも破かれるし、通行を妨害するような行為もある。どうにかしてほしい」と訴える。


▲大阪府警が公開している迷惑防止条例改正の案内ポスター

「ボラれた」

 かつてミナミで悪質客引きにあった中年のサラリーマンは「『安くていい店があるよ』と声を掛けられた。店の前で5千円を渡して入店したが、いかにも不健康そうなホステスが対応。そのホステスは店の奥にいた、いかつい店長と目くばせしていた。雰囲気があやしいので、すぐに店をでたが、それでもボラられてしまった。店を出るときに分かったが客が逃げられないように店のドアのカギも細工していた」と恐怖体験を語る。

「店の前」でもダメ

 対象外の店が増えて、現行の条例では実態にそぐわなくなった。そこで実効性のあるものにするため、府警は条例改正に踏み切った。まず規定から「異性」を外し、性の区別なく、接待を伴う飲食店営業による客引きは禁止された。さらに「異性に対する好奇心をそそるような方法により、客に接して飲食させる形態の営業(酒類を提供するものに限る)による客引き」も禁止となり、ガールズバーなどの「カウンター越し」の店もアウトとなった。

 そして最近、東京での摘発例が目立っていた「メンズ」や「中国」「韓国」と付けたエステ店にも条例を拡大、改正して禁止された。これらの店はマッサージ店を装うが、実態は性的サービスを提供している店が少なくなく、客引きも横行している。そこで一般的なマッサージ店が営業を終える深夜(午後10時~翌午前6時)の客引きが禁止と改正された。

 改正条例は7月1日に施行される。違反した場合は罰金50万円または懲役6カ月以下の罰則となっている。ちなみに客引きは店の前であっても「路上での声掛け」はできない。