不動産の市場調査を行う不動産経済研究所(東京都新宿区)は1月25日、2023年の「新築分譲マンション市場動向~近畿圏編~」を発表した。2府4県(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)の販売戸数は、前年比13・8%減の1万5385戸だった。
※記事中の「府内」は大阪市を除く
大阪府は9501戸(前年比11・7%減)。そのうち、大阪市内は6529戸(同8・9%減)、府内は2972戸(同17・4%減)となり、供給戸数が減少していることが分かった。
契約率については、近畿圏全体の契約率は71・4%。前年比1・3ポイント下がったものの2年連続で70%超となった。大阪市内の契約率は75・5%、大阪府内は66・7%となった。
1戸あたり価格、平米単価とも連続アップ
1戸あたりの販売価格は 前年比0・7%アップの4666万円。平米単価は同2・1%アップの79万円となり、1973年の調査以来、最高値となった。なお、近畿圏における分譲マンションの最高価格は「シティタワー天王寺」の5億5000万円だった。
大阪市内の平均単価は前年比9・7%マイナスの4204万円。平米単価は同比1・3%マイナスの90・2万円となった。府内は、4・3%アップの4944万円。平米単価は2・4%アップの69・6万円となった。
これらの結果について、同社の担当者は「大阪市では23年、タワーマンションの新築販売戸数が極端に少なかったことが、販売減、契約減となった。一方、府下では、マンション需要が駅から徒歩10分以内に限られるなど、立地も限定されるため、23年の供給戸数が前年に比べて減少したと見られる」と話す。
事情に詳しいES&Company(大阪市中央区)TOWERZギャラリー御堂筋本店の芝崎健一さんは「都心部は実需層に加えて、海外富裕層や転売目的の法人購入が目立った。一方、郊外エリアは実需購入が多数を占め、住宅ローンでの購入割合も多いため、価格や金利上昇に対して、敏感に反応している様子だ。マイナス金利解除の時期が近いことが購入に対して、ブレーキをかけている」と分析する。
24年も価格上昇見込まれるか
24年について、不動産経済研究所の予測では、発売戸数は23年より1115戸増の1万6500戸程度と見込む。販売価格については、「工事費が高騰する中、同じエリアであれば、23年より価格が上昇するのは間違いない」(担当者)。
阪急阪神不動産(大阪市北区)の担当者は「大阪はうめきた2期、万博、IRと開発が目白押しで先高感がある。資材、人件費ともに高騰が続いており、値下がりする要素がない。当面は、マンション価格の上昇が続くのではないか」と推測する。
前述の芝崎さんは「最高価格が25億円の『グラングリーン大阪 ザ・ノースレジデンス』がいよいよ第1期分譲開始となる。この大阪の市場が一気に上がるタイミングに、全国から投資家や富裕層が買いに走ることが予測されるため、大阪都心部においては、新築市場と中古市場ともに、過去最高の販売価格となることが容易に予想できる。都心と郊外の2極化がますます鮮明になっていくことが、今後のマーケットではないか」と語る。
厚生労働省が2月6日発表した「実質賃金指数」の現金給与総額は前年比2・5%減と国民の収入増が見込めない昨今。マンション価格高騰は近い将来どのような影響をもたらすのだろうか。