【令和版 ニチニチ子育て研究所】小児歯科専門医に聞いた 子どもの歯科矯正の疑問🦷

 近年、保護者からの関心が高く、歯列矯正を受ける子どもが増えている。気にはなっているけど、どのタイミングで始めたら良い?どのくらい費用はかかるの?と疑問だらけ。小児歯科専門医に子どもの歯列矯正について疑問を聞いてみた。

渡邊あき院長先生

天満橋こども歯科&矯正クリニック
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医
渡邊あき院長先生

 2006年に北海道医療大学歯学部卒業後、済生会中津病院歯科口腔外科に研修医として勤務。その後、大阪大学小児歯科学講座に入局。退局後は小児・矯正歯科の専門医院と矯正専門医院に従事し、2021年に大阪市北区唯一の小児歯科専門医院として「天満橋こども歯科&矯正クリニック」を開院。「0歳からの歯科医院」としてむし歯の予防から歯並びのことまでサポート。

Q1.歯並び・かみ合わせが悪いとどのような悪影響がありますか?

 虫歯や歯周病になりやすいことや、よくかめないことから咀嚼機能の低下、顎の成長不全を起こすこともあります。また歯並びが悪いため舌をうまく動かせず、その結果、正しい発音や嚥下ができないこともあります。よくかめないことで悪い姿勢につながったり、集中力の低下につながることもあります。
 また、かみ合わせが極端に深い場合は将来的に顎関節症になる可能性も高くなります。80歳で20本の歯を保っている人は歯並び・かみ合わせも良いとのデータもあります。自分の歯で一生食べていくことが全身の健康管理にもつながっていくことを皆さんに知っていただけたらと思います。

Q2.矯正治療はいつからはじめる?

 反対咬合(下の歯が上の歯より前に出ている受け口)、交叉咬合(顎が左右にずれている)など食べ方や飲み込み方に影響のでるケースは子どもの協力が得られれば就学前の早期に開始することが良い場合もありますが、一般的に小学校低学年で一期治療を始めることが多いです。その後必要に応じて二期治療を行いますが、小学校高学年以降の永久歯が全て生え揃ってからのタイミングが多いです。
●一期治療/乳歯と永久歯が混在している混合歯列期に行う矯正治療
●二期治療/一期治療終了後、全ての歯が永久歯に生え変わった後の永久歯列期に行う矯正治療

Q3.矯正治療の期間はどのくらいですか?

 不正咬合の種類などによっても多少異なりますが一期治療で1年から1年半位です。二期治療では2年から3年ほどとお伝えしますが、患者さんの協力性や不正咬合の種類によってかわってきます。
 主に一期治療では「歯を並べる治療」というよりも上下の顎のバランスを整える「土台作り」が中心となります。また顎の正しい成長を阻害する原因があればこの時期に取り除くことも重要です。一期治療の結果、永久歯が理想的な位置に並ぶこともありますが、二期治療が必要なケースもあります。矯正治療は的確な診断と治療方針が重要となりますので、一期治療診断時に将来的な二期治療の必要性についてはご説明しています。

Q4.矯正治療中に痛みは? 食事は?

 新しい装置をつけた時は3日~1週間は違和感が出るとお伝えしていますが、ほとんどの子どもたちはすぐに慣れてきて、普段通り生活できています。
 食事については、透明のマウスピースタイプであれば外して食べることができます。取り外せない固定式はネバネバしたキャンディ・ガム・餅などは食べられません。あと極端に硬い物は装置が壊れる場合があるので注意が必要です。それ以外の普段の食事については問題ありません。

Q5.平均的な費用は?

 歯科医院によって異なりますが、一期治療で30~50万前後、永久歯列期の治療で70~100万前後が相場だと思います。子どもの歯並びや噛み合わせの状態によって治療内容や期間なども異なってきますので、きちんと検査を受けた上で費用面も含めて総合的に検討されることをお勧めします。

【まとめ】
 虫歯の治療で来院した際に歯並びやかみ合わせに問題があることがわかる場合もあります。焦る必要はありませんが、5歳ころには顎のレントゲンを撮って歯の状態を知っておくことをお勧めします。また、就学前から歯科医院を定期的に受診し生え変わりに異常がないかを診てもらい、必要なタイミングで治療を開始できると良いでしょう。