コロナ禍で活躍 訪問美容 増える「産後ママ」や「子ども」の利用客

 コロナ禍で、美容室の三密を避けたい人に広がる訪問美容。高齢者が利用するサービスの印象があったが、最近は子育て中のママや子どもの利用も多という。大阪市内を中心に、最前線で活動する安永仁さんと山本麻衣さんの2人に、訪問美容の〝今〟を語ってもらった。

─なぜ、サロンではなく訪問美容の道を?


訪問カット「ジン」を運営する安永仁さん。美容師歴40年以上。以前はサロンも構えていたが、訪問カットに将来性を感じ、転身。「どこでも、どんな体勢でも」と集中治療室の中でカットした経験も。

安永 正直、お店でじっとお客さんを待つのが好きじゃなかったので(笑)。知ってもらうために宣伝をし続けると同時に、病院や施設にも案内に赴き、少しずつ利用客を増やした。そのおかげで今ではスケジュール帳がびっしり。たくさんの人に喜んでもらえています。

山本 訪問美容の専門スクールもありましたが、学校のやり方に染まりたくなかった。お客様や自分自身の負担を極力減らすよう試行錯誤した結果、いまのスタイルにたどり着きました。

─訪問時のシャンプーはどうやって?

安永 僕は「ノンシャンプー」にたどり着いた。訪問美容は寝たきりのお客さんへの対応もあり、サロンでは考えもしなかった問題に遭遇する。その課題をクリアしていき、ニオイを分解する電解水を用いた〝ふきとり手法〟にたどり着いた。海外の美容を勉強したとき、髪をゴシゴシ洗うのは日本だけと知り、カラー後もシャンプーせず、ふき取るだけ。その方が髪がキレイになるんです。

山本 私の場合、どんな体勢でも洗髪できる特殊なシャンプー台を持参します。大荷物ですが(笑)


出張訪問美容「スティラズ」を運営する山本麻衣さん。美容師歴20年。3人の子を出産してサロンに復帰した後、女性専用の訪問美容で独立。産前産後で美容室へ行けない人、美容室を嫌がる子ども、精神疾患で美容室が苦痛という人の利用が多い。

─仕事にやりがいを感じるときは?

安永 寝たきりだったお客様が、髪がキレイになったことを喜んでくれ、次に訪問したときはベッドに座って待ってくれていた。その次は、ベッドから離れたいすに座って…。キレイになることで、次第に元気になられる姿が見られるとうれしい。だから「キレイですね」「かわいいですね」と声をかけます。

山本 わかります。「年寄りっぽくしないでね」と女性はいくつになっても美意識が高い。お客様に「美容室に行っていたころは1秒でも早く帰りたかった。今みたいに『こんな髪型にしてほしい』と伝えられなかった」と言われたときはうれしかった。

─二人にとっての訪問美容とは?

安永 お客様に用意してもらうのは半畳のスペースだけ。それさえ与えてくれれば、最低5歳は若返らせます。

山本 美容室に行くことが精神的、肉体的に困難な人にキレイになってもらえるところ。例えば、子育てママ。私も3人の子がいるのでよくわかる。予約時間から逆算して家事や育児を済ませ、施術中も終了時刻が気になったり。癒やされるはずの美容室で逆に疲れを感じてしまう。 でも、訪問美容なら子どもが騒いでも大丈夫。気軽におしゃべりしながら美しくなれる。訪問美容の良さを知ってもらえれば、さらにニーズは高まるはずです。