徹底解説 新住宅ローン減税 控除率縮小で「改悪」と言われるけれど… 新制度で得する人も


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 住宅購入を考える人にとって最大の関心事である住宅ローン減税。新制度は控除率が縮小されるなどで「改悪」を主張する声もあるが、実は新制度の方が、お得になる家庭も多くある。くわしく探ってみよう。

 表を見ながら、新制度についておさらいしよう。まずは昨年末に期限を迎えた住宅ローン減税は、2025年の入居分まで4年間延長されることになった。旧制度で年末ローン残高の1%だった控除率は、0・7%に引き下げられる。その代わり控除が受けられる期間は、新築住宅は13年間に伸びた。

 控除対象の借入限度額については、住宅の環境性能に応じて上乗せされる。新築の場合、23年末までの入居なら一般住宅は3000万円、省エネ基準適合なら4000万円、ZEH(ゼッチ)水準なら4500万円、長期優良住宅なら5000万円が上限だ。


▲※ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの通称。断熱性能などを大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅。
(経済産業省・資源エネルギー庁のホームページより)

 ただし、住宅ローン減税が4年間延長されたとはいえ、24年~25年末までに入居分は、一般住宅は0円(23年までに新築の建築確認で2000万円)、長期優良住宅も4500万円となるため、早めの購入が必要だ。

 加えて所得の高い人を対象から外すため、所得要件は旧制度の3000万円から2000万円に引き下げられた。

ファミリーはお得に?

 今回、控除率が1%から0・7%に引き下げられたことで、「戻ってくる税金が少なくなる」と多くの人は思っているかもしれないが、実際にはお得になる人も多くいる。

 なぜなら、住宅ローン減税は、納めた所得税を減税する制度だが、子育て世帯で扶養控除を受けている場合、減税で戻ってくる金額まで所得税や住民税を納めていないケースも多いからだ。

 例えば、年末の住宅ローン残高が4000万円の場合、旧制度では、控除率1%だから、その年は通常なら40万円が戻ってくる。ところが、みんながみんな40万円戻るわけではない。

 年収500万円で所得税14万円、住民税25万円を納めている家庭のケースで計算してみよう。

 控除されるのは、まず所得税の14万円、続いて所得税から控除し切れない残りの26万円分は翌年の住民税から差し引かれる。しかし、住民税から控除できる額には上限があり、限度は13万6500円だ。それを加味して計算すると、所得税14万円+住民税13・65万円=27万6500円が実際に控除される額となる。つまり、せっかく40万円の控除枠があっても、12万3500円分は使い切れないということ。旧制度の控除期間が10年だったので、単純計算すると最大400万円(40万円×10年)の枠のうち、276万5千円しか戻ってこない。

 では、これが新制度の控除率0・7%、13年になるとどう変わるか。年末残高4000万円の控除率0・7%は28万円だ。先ほどの家族のケースだと、所得税の14万円、住民税の控除上限13・65万円を足し、27万6500円と、28万円の枠内にきっちり収まった。

 わかりやすいように年末ローン残高が期間中ずっと4000万円だったとして計算すると、27・65万円×13年=359万4500円となり、旧制度よりも83万4500円増えた。

 つまり、独身で扶養控除がなく、税金をたくさん納めている年収の高い人は改正前の方がお得だったが、大半の子育て世帯にとっては、新制度の方がお得になるケースが多々出てきそうだ。

 余談だが、借入限度額の恩恵が受けられる23年末までの入居を考える場合、住宅の引き渡しとローン実行が成立していることが必要となる。銀行は完成していない物件にローンを付けないので、12月のギリギリに完成すると間に合わない可能性がある。目安として1カ月の余裕を持って11月頃には完成させておくのがポイントだ(ただし、大手住宅メーカーの場合は、メーカーが銀行に対して保証するからこの限りではない)。

子育て世帯向けの補助制度も

 住宅取得に現在、「こどもみらい住宅支援事業」という補助制度が実施されている。これは住宅で使うエネルギーと作るエネルギーをプラスマイナスで0にしたZEHなどの高性能住宅の購入に、最大で100万円を補助してくれる。

 対象は新築住宅の場合、18歳未満の子どものいる世帯か、夫婦いずれかが39歳以下の世帯。

 補助金は登録した事業者を通じて支払われるため、補助金を希望する場合は工事を依頼するハウスメーカーや工務店が、事業者登録をしているかどうかを確認してみよう。予算枠や期限がある関係から、旭化成ホームズの花博展示場の責任者である三谷尚徳さんによると、「5、6月くらいに工事に入れるスケジュールが望ましい」そうだ。