住宅密集地の解体・建替えを補助 防災空き地にすると固都税が非課税に

 大阪市では、防災面に課題がある住宅密集エリアを整備するため、さまざまな補助制度を設けている。どのような支援があるのか解説する。

 JR大阪環状線外周部を中心に、密集住宅市街地が広く分布する地域では、建物の老朽化や狭あいな道路など、防災面や住環境面でさまざまな課題を抱えている。そのため大阪市では、「大阪市密集住宅市街地整備プログラム」と題し、防災骨格を形成している。

 「対策地区」は約3800㌶あり、中でも燃えにくさ、逃げやすさの指標を達成していない防災街区として、「重点対策地区」を設定している=地図参照。

補助制度対象エリア

 主な制度は古い住宅の解体補助。最も活用されているのは、狭い道路に面した古い木造住宅の解体で、名称は「狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度」。幅員4㍍未満の道路に面した、1950年以前に建てられた木造住宅の解体費の一部を補助するというもの。「重点対策地区」においては、幅員6㍍未満の道路に面した81年5月31日以前に建てられた木造住宅が要件。

 補助限度額は、戸建てが75万円。集合住宅が150万円。長屋の一部解体は75万円。「重点対策地区」では、戸建が100万円。集合住宅が200万円。長屋の一部解体は100万円。補助率は2分の1以内。「重点対策地区」は3分の2以内。

防災空き地にすると固都税が非課税に

 防災空き地として活用する防災空地活用型除却費補助制度では、古い木造住宅を解体し、避難場所として活用する場合、解体費用、整備費用の一部を補助する。「重点対策地区」のみを対象としているが、同制度を利用した場合、土地の固定資産税、都市計画税が非課税となる(整備の翌年以降)。要件は市が土地を無償で借り上げる、無償使用賃借契約を5年以上締結した場合。所有者から契約解除をしない限り、固定資産税、都市計画税は非課税のままだ。

 対象は、幅員6㍍未満の道路などに面した81年5月31日以前に建てられた木造住宅で、敷地面積50平方㍍以上。補助限度額について、解体費用は戸建住宅が100万円。集合住宅が200万円。長屋の一部解体は100万円。空き地の整備費用は120万円。補助率は3分の2以内。

活用事例

 そのほか、集合住宅への建て替えや、狭あい道路に面した建物を建て替えし、後退した部分を道路として整備する場合、拡幅整備費用の一部補助などがある。

 いずれも高齢の所有者に代わり、配偶者や子どもなどの親族が補助事業を実施できるほか、不動産投資など直近で物件を取得した者も活用できる。

 これらの不動産は所有者の高齢化や権利関係の複雑さ、相続などさまざまな問題を抱える現状もある。大阪市は「地震時等に著しく危険な密集市街地」の未解消面積が641㌶と全国で最も大きい中、同制度により解消は進むのか。災害時の被害拡大は避けたいところだ。

(加藤有里子)

補助制度早見表