政府が買い付けた輸入小麦を国内の製粉企業に売り渡す価格(5銘柄加重平均、税込み)が3年ぶりの引き下げとなる。農林水産省は9月12日、10月期の売り渡し価格を4月期の1㌧あたり7万6750円から11・1%引き下げ、同6万8240円にすると発表した。
輸入小麦引き下げの要因は、米国の主要産地が豊作だったことや、中国向け貨物輸送の需要が減少するなどで、海上運賃が下落したため。
日本で消費される小麦粉の約8割は外国産で、輸入小麦はまず日本政府が買い付けてから、国内の製粉会社に売り渡す仕組みが取られている。価格は半年ごとに見直され、直近半年の買い付け価格をベースに算定。2020年10月期(1㌧4万9210円)から上昇し続けていた。
農水省の試算によると、この引き下げが小売価格に与える影響は小さい。食パンで1斤あたり約2円、外食のうどん1杯で約0・9円、中華そば1杯(同)約0・7円、家庭用薄力粉で1㌔約13円の値下げにとどまる見込み。
この改定で製粉会社が小麦価格を改定する時期は、各社の在庫状況にもよるが過去の例から約3カ月後が目安という。
1900品目で値下げの可能性 帝国データバンク
輸入小麦の価格引き下げに伴い、帝国データバンクが主要食品メーカー195社に価格改定についての動向を調査している。同社によると、パン・菓子1900品目で値下げの可能性があるという。今年値上げが実施された、または今後予定がある3万1036品目のうち、小麦粉の価格高騰が直接の要因となったものが少なくとも1906品目あったためだ。このうち、約8割がパン製品の1546品目。クッキーやケーキなどの菓子製品を合わせ、全体の約9割がパン・菓子だった。加工食品でも、即席めんなどで小麦高騰の値上げが目立っていた。
一部の食品はすでに値下げが実施されたケースもあり、今後「値下げ」の動きが広がる可能性も。ただ、足元では物流費やプラ製包装資材などでコスト増が続き、パンや菓子製品では砂糖など副材料の高騰が続く。高止まりしている電気・ガス代の動向や円安の長期化も加わり、原材料価格の下落を理由とした値下げはわずかにとどまっているのが現状という。
食品メーカー各社では小麦価格下落による製品価格への反映について順次検討するとみられるが、値下げの実現は早くとも24年以降になると予想されるという。