「壊れてもいいんです」“記憶に残る”歴史の伝え方 御所・三光丸クスリ資料館

御所・三光丸クスリ資料館

和漢薬「三光丸」の成り立ち

 「三光丸クスリ資料館」は奈良県御所市今住地区にある、薬の「体験型ミュージアム」。700年にわたって愛され続けている和漢薬「三光丸」の歴史と奈良の薬文化をテーマに、1990年から運営されている。

 資料館のある今住地区は、吉野山、葛城山といった歴史的山地と程近い。館長の浅見潤さんは「日本の多くの歴史や文化が始まったとされるこの一帯は、和漢薬の成り立ちにおいてもとても重要な場所です」と語る。

館長の浅見潤さん

 和漢薬とは、日本古来の薬草文化に、5~6世紀に中国より伝来したとされる漢方を取り入れ、日本人に合うよう独自に発展した薬のことを指す。和漢薬作りが盛んになった1300年当時、知識階級である貴族・僧侶を多数かかえていた大和国(現在の奈良県)の製薬業は急成長し、たちまち“薬のメッカ”となった。

 同時期に三光丸も誕生。江戸時代に入り現代の“置き薬”システムの元となる「大和売薬」が成立すると、吉野の修験者や行商人の手で全国の一般家庭に薬が広まった。そのまま奈良県は、現在まで和漢薬業界をリードする地域となり、「三光丸クスリ資料館」はその歴史を伝える貴重な資料庫となっている。

今も多くの利用者がいる「三光丸」

触れて学ぶ日本の歴史――館長が考える「伝わる展示」

 資料館に入るとたちまち、三光丸の原料の一つでもある桂皮(シナモン)特有の強い香りに包まれる。館内では製薬に使う多数の生薬や機材、歴史文書が実物展示されており、館長のガイドとともに三光丸の成り立ちを詳しく知ることができるほか、すぐ近くで稼働している工場も見学可能。「大人の社会見学」として、最近は20~30代の来館者も多い。

 人気の薬づくり体験では、江戸時代から実際に使われていた機材を使用。生薬を挽き、すりつぶし、専用の升で包み紙に入れるところまで、一連の作業を当時のまま体験できる。薬入れや看板などの歴史資料、生薬の原木にも触れられ、コロナ禍まではセンブリの味見会も行うなど、とにかく体験性にこだわって来た。

実際に使われた機材で薬づくり体験

 「五感をフルに使って体験するのが当館のコンセプト。実際に触ってもらうほうがよく記憶に残るし、何より楽しんでもらえると思う」と浅見さん。小学生の団体が訪れたときは、館内はいつもめちゃくちゃになってしまうそうだが、「在庫はたくさんあるし、壊れてもいいんです」と笑った。「訪問後の学級新聞をいただくと、子どもたちの楽しそうな声であふれていて、とてもうれしい。これからもたくさんの人に、薬の歴史、日本の歴史に誇りをもってもらえるよう頑張りたい」と話した。

■三光丸クスリ資料館:【場所】奈良県御所市大字今住606番地/【電話番号】0745-67-0003/【入館料】無料/【営業日時】午前9時から午後4時、土、日曜定休(第2土曜は開館)

(長澤 拓)

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