医療法人青青会「三愛クリニック」理事長、東條文龍さん
政府の対策はあまりにも遅く、あまりにも小さい
2022年の国内出生数は前年比5・1%減の79万9728人(厚生労働省)。80万人割れは比較可能な統計を取り始めた1899年以降、初めてだ。年率5%減が続けばわずか10年で日本の出生数は50万人を割り込む。我が国は「異次元の少子化」に突入した。岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げ、具体策をまとめているが、これまで大胆な医療改革の提言などを行ってきた医療法人青青会「三愛クリニック」理事長、東條文龍さんは「根本的かつダイナミックな対策しかない。子育て、教育に冷たい国の返上を」と大胆な政策を提言している。
社会機能維持 可否の瀬戸際
岸田文雄首相が「従来とは次元の異なる少子化対策」を打ち出し、子ども・子育て政策を最重要課題と位置づけ、育児休養の給付金を最大4週間、手取り収入の実質10割まで手厚くし、男女が共に育児参加する環境整備を目指している。ただ、肝心な財源は未定で、実施時期も定まらない政策が多い。
2022年の国内の出生数は、統計開始以来初めて80万人を割り込んだ。今の大学生は同じ世代は110万人、いかに少子化が急速に進んでいるか明らかだ。
政府の少子化対策をみてみよう。①児童手当を中心とした経済的支援の充実→所得制限960万円の撤廃②学童保育や一時預かり、産後ケアなどのサービス拡充③子育てしやすい働き方改革―の3本。これにとって付けたように児童手当が中学卒業まで子ども一人につき月額1万円から1万5千円。この政策に対し、東條さんは、「『too Late too smal I』。あまりにも遅く、あまりにも小さい」と批判する。
急速に進展する少子化の現状に対し東條さんは「我が国の社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際の状況」と危機感を示した上で、少子化の背景を具体的に「高齢化と老人優先の社会と政治」「経済力の低下(GDP約20年間同じ・給与も)→消費税上昇、可処分所得の減少」「男女ともに生殖能力の低下」「晩婚化」「教育費の高騰」「高い税金→国民負担率」などと指摘した。
その上で、「根本的にかつダイナミックな対策を打つべき」と①大減税②男女交際・結婚・出産を国と社会が推薦応援③出産に際して高額報酬④教育費の無償化⑤育児休暇の長期化⑥保育の無償化、保育・育児施設の整備⑦婚外子を認める社会⑧国や社会が子どもを育てる環境―の8点の施策を緊急提言。
子育てへの公的支出が少ない
政府が1990年代から取り組んできた少子化対策は残念ながら実を結んでいない。2022年の国内で生まれた日本人の子どもの出生数は、79万9728人。第2次ベビーブームの1973年(出生数209万人余り)以後は減少傾向が続き80年代のほぼ半数、改善どころか少子化は一層加速しているのだ。
東條さんが指摘するように経済協力開発機構(OECD)の調査では、国内総生産(GDP)に対する子育てに関わる日本の公的支出の割合は2019年度で1・74%。スウェーデン(3・42%)、フランス(2・73%)を大きく下回っている。児童手当などの現金給付もわずか0・65%。OECD平均の1・16%の半分程度に過ぎない。東條さんは「子育てや教育に国がお金をかけてこなかった現実がある。教育の無償化をすべき」と危機感を募らせている。
自分事として行動を
教育への公的支出も低い。2019年の大学レベルの教育費についてもOECDのデータによると、日本は家計負担が52%で公的支出(33%)よりかなり高い。加盟国平均(22%)の倍以上と高い負担水準だ。政府は2020年度から低所得世帯の学生に授業料減免と給付型奨学金を支給する修学支援の制度を開始したが、私費負担に比べてまだまだ少ない。
少子化対策を標ぼうしながらも現実の日本は世界の中でも「子育て、教育に冷たい国」といえる。
東條さんは「特に一票を持っている若い人たちは自分事として行動すべき。自分たちで未来をつくってほしい」とメッセージを送っている。
医療法人青青会 三愛クリニック
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