大阪・関西万博が4月13日、いよいよ開幕する。メディアでは「工事遅れ」や「チケットの販売不振」など不安を示すニュースが目立つが、欧州の海外メディアなどは「未来に光を与えるような日本企業のテクノロジー」と好意的に取り上げている。せっかく大阪で開かれるのだから、未来に夢を感じさせる万博にふれてみよう。

欧州を広くカバーする放送局、ユーロニュースが約20分番組で大阪・関西万博について取り上げている。その内容は日本とはアングルが違う。企業の最新技術や将来の可能性に言及しながら、いくつかの企業の取り組みを紹介している。
波の動きで発電する再生可能エネルギーの開発に取り組むイエロードック(大阪ヘルスケアパビリオン)。ちとせグループが研究する微細藻類は食料問題の解決や化石燃料からの脱却まで、多くの可能性を秘めている(日本館)。京大ベンチャーのオプトマスは赤外線を電力に変換できる太陽光パネルを開発(電力館)。日本特殊陶業は超音波を使い、デジタル空間でモノにさわっている感覚を作り出す(未来の都市パビリオン)。LEPが開発する生物発光の技術は、電力を使わず植物自らに発光させて電力消費量を激減させる(大阪ヘルスケアパビリオン)。

70年万博で人気だった人間洗濯機の次世代機となる(3月23日撮影)
番組ではこうした日本の企業の技術が紹介され、「万博では関西エリアの400以上の中小企業がテクノロジーを披露する。未来に光を与えるような技術で、計り知れない可能性がある。きっと私たちはどんな困難をも乗り越えていけるはずだ」と締めくくっていた。
日本人ならすでに知っている技術もあるだろうが、ポジティブに万博本来の意味「未来へつながる何か」にスポットを当てている点が、日本のメディアとは大きく異なると言わざるを得ない。

万博は製品の展示会でも物産展でもなく、私たちの未来につながる何かを、それが研究段階だとしても未来を変える可能性のある、さらに夢を感じさせてくれるもの。本来、ドキドキワクワクさせてくれるものの方が注目されるべきはずだ。
会場へ行ったらもちろん、楽しそうなコンテンツも思いっきり楽しめばいい。しかし、同時に私たちの未来に影響を及ぼす可能性がある研究段階の技術や製品、サービスにも目を向け、注目したいところだ。

国内館だけでなく、海外パビリオンでも各国が未来に大きな影響を及ぼすかもしれないテクノロジーや取り組みを紹介している。そちらもお見逃しなく。


「おばけ」と環境問題楽しく学ぶ
建物に加え、来場者が体験できるコンテンツが完成したガスパビリオン「おばけワンダーランド」がこのほど、内容を公開。
三角形のユニークなパビリオンは、スペースクールという放射冷却素材を使い、館内の温度を季節によって2~6度下げることができる建物だ。

メインルームでは40人がXRゴーグルをつけ、全員同時に拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の世界に。360度のデジタル空間を飛び回るおばけの空間を体験。物語を通して環境問題の課題が出題され、次の部屋で種明かしされる。

「ばける展示エリア」では、環境問題や未来のエネルギーと言われるe-メタンを学び、未来の地球や自然、生活環境を守るために一人ひとりが意識や行動を変えることの大事さを伝える。全体の所要時間は約40分。ばける展示エリアは予約なしで入場可能。
自然がパビリオンに アートと調和する「静けさの森」
全周約2㌔㍍の大屋根リングの中心で、シンボル的な緑地を形成する「静けさの森」。広さは京セラドームの約1.5倍で、中央の池を囲むように1500本の木々が植えられ、70年万博が開かれた万博記念公園(吹田市)の樹木なども移植されている。

=3月12日、ATC(大阪市住之江区)
3月12日のメディア発表では、宮田裕章プロデューサー(慶應大医学部教授)のシグネチャーパビリオン「Better Co-Being」とも連携し、5つのアート作品の内包を発表。 すでに森には鳥や虫が集まり始め、生態系の芽生えも。宮田さんは「日本の自然は手を加えなければ植物に覆われ、森が育つ国。森は生態系の象徴であり、人もその一部だ。自然とどう共に生きるかを、訪れた人と一緒に考える場所になれば」と話した。
