社会人落語日本一決定戦 優勝は障がいの有無関係なくダントツで「呆っ人」さん

 池田市で毎年恒例となっている社会人落語日本一決定戦が12月7〜8日に開催され、入賞者が決定した。優勝は、創作落語「こってまんな」を披露した、兵庫県出身の高座名「呆っ人(ぽっと)」こと宮永 真也さん(45)が第16代目名人に選ばれた。

左から大会実行委員長の瀧澤智子池田市長、左から大会実行委員長の瀧澤智子池田市長、入賞者と大会統括の桂文枝さん

 国内外から応募総数339人のうち162人が予選進出。予選会は池田市内の「みゅーじあむ」や近隣の寺、公民館などの各所で開催され、期間中は同市が「落語のまち」となり賑わいをみせるのが季節の風物詩となっている。

 決勝戦は10人で争われ、入賞者は、優勝 呆っ人(ぽっと)/宮永 真也さん(45=兵庫県)、2位 おきらく亭 すい好/宣野座 一さん(64=沖縄県)、3位 参遊亭 小遊(さんゆうてい こゆう)/荒井 久美子さん(62=東京都)、市長賞 立命亭 雷都(りつめいてい らいと)/新川 慶光さん(37=兵庫県)が選出され、表彰状と副賞を手にした。

第16代名人「呆っ人」さんと大会統括の桂文枝さん

 呆っ人(ぽっと)さんこと宮永真也さんは、20歳の頃に目の病気「網膜色素変性症」と診断され、現在も目に不自由さを抱えている。病気の症状で段々と視力が悪くなっていき、日常生活において徐々にできなくなっていくことが増えていった。車の運転ができなくなったり、仕事も変えなければならない中、15年ほど前に落語に出会いのめり込んでいった。

 落語に出会ったきっかけは、目が見えなくてもカラオケで歌詞を記憶して歌えることに気づき、これなら落語もできるのではないかと図書館で桂枝雀さんの落語を聞いてそれを覚えるところから始まる。そこから練習を重ね何度も同大会にエントリーしており、数年前の決勝戦で敗退した際に非常に悔しい思いをし、今年こそは優勝してやると意気込んで今大会に挑んだという。

 大会統括の桂文枝さんは、「落語というのはこれをしたから何点という審査基準はないもので、それぞれの審査員の感覚でしかないのだけれど、今回はそれが皆大体一致していてダントツでした」「呆っ人さんの良かったところは、鍼灸マッサージ師のリアリティが凄く感じられ、発想が非常に面白かった。しゃべりが凄くしっかりしていた上に、目が不自由なのにも関わらず所作や模倣の描写が的確だった」と評価した。

 呆っ人さんは副賞の30万円をどのように使うか問われると「簡単には思いつかないです。そもそもこれが果たして本当にお金なのかも(僕には)わからないですし」とにこやかに答え、場に笑いを誘っていた。